― 550 ―与えられている。番兵とキリストと天空に用いられた赤は、画面下部、中央部、上部を均一にする色面の構図として機能する。トゥシェボンの画家は、ここで色彩を表現的かつ構図的手段として用い、魔術的な明暗法によって《復活》を真に奇跡的な現象として描き出したのである。時代をはるかに先取ったこの明暗法は、トゥシェボンの画家が創造した最も偉大な絵画原理であり、もしこの神秘的な受難伝から薄明のヴェールを剥がしたら、彼の絵画的魔術は霧消するであろう。しかし、そうすることで彼の画面を支える線的コンポジションが明らかになってくる。つまり、それは最も奇異な印象を与える斜めの大構図であり、これが視覚的統一の第二の要素となっている〔図1−2〕。それは石棺と岩山が生み出す二つの並行な対角線であり、それによって二つの視点が統一される。縦長画面の下部は俯瞰視で、上部は水平視で捉えられているが、視点が切り替わる画面の中央部分に、石棺と岩山が規定する対角線が引かれており、これによって俯瞰視と水平視の空間的ギャップが解消されているのである。というのも、斜線は二次元平面では上方を、三次元空間では奥方向を示すものだから、この奇妙な石棺モティーフは、遠近法的知識の欠如によるものでは決してなく、画面の上下を不都合なく連続させ、空間的奥行を表現する二重の価値を持った構図的線として機能しているのである。《復活》では、石棺の長辺が示す二つの並行な対角線が、キリストの身体と彼の十字架杖が示す垂線と交わることによって、空間の奥行きが効果的に創り出される。一方、《オリーブ山》では、風景の舞台となる岩山の稜線が、画面左下から右上へ急勾配でせり上がり、三人の使徒たちとキリストを対角線上に隔て、これと並行な第二の岩山が、キリストとユダの空間的前後関係を示す。興味深いのは、画面手前にある第一対角線上が最も明るく、ほとんど白色の光の筋となって輝き、空間的な奥を示す第二対角線上が最も暗い。したがって、画家は対角線上の空間的前後を明暗法によって表現しているのだが、このコンポジションは本来的に線的、平面的にデザインされているのである。板絵の表面には、現在でも目視できる刻線がある。下地の上を引っ掻いたこの刻線は、形体の輪郭部分、構図を自由にデッサンしたものだが、モデリング部分には現れない(注8)。この事実からも、画家が絵画の平面性を念頭に置きながら、コンポジションと形体を線的連続によって構成していたことがわかるのである。このようにして、トゥシェボンの画家は斜線、曲線、垂線、あらゆる線的要素をコンポジションの線として役立てる。つまり、画面全体に渦を巻く線的リズム、これが視覚的統一の第三の要素である。平面的に意匠化された衣のドレーパリーに現れる、カリグラフィックな描線は、細長く垂直に引き伸ばされたキリスト像に上昇運動のリ
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