鹿島美術研究 年報第28号別冊(2011)
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― 571 ―公使の顔も見られる。⑻ 口絵について─風俗に関する作品日露戦争以後の『近事画報』においては、戦争とは関係のない風俗画も、口絵のなかに登場してくる。「オールライト!!!」(『近事画報』100号、明治39年11月)では、遠洋漁業の捕鯨を描いた作品である。画面の下方に捕鯨を行う船があって、画面の上方には鯨が大勢浮き上がっている。「世界第一の巨艦薩摩艦の進水式」(『近事画報』102号、明治39年12月)では、戦艦薩摩の進水式を描いており、数羽の鳩が飛び去る部分を表現している。また「かるた会」(『近事画報』104号、明治40年1月)では、新年号であるのに際して、かるた会の様相を描く。そして「探梅」(『近事画報』106号、明治40年2月)では、梅の花を探しに出かけた男女の二人連れを描いている。彼らが見ているのが、満開になった梅樹と思われる。⑼ コマ絵について─日露戦争と係わる風俗口絵のコーナーにおいては、日露戦争に関する場面が多く紹介されていたが、コマ絵については、日露戦争と係わるものは少ない(注4)。ここで紹介するのは、日露戦争と係わった風俗に関する作品である。「軍中の消閑」、「露兵死を惜む」(いずれも『戦時画報』17号、明治37年8月)については、前者はロシアの老将軍と年少士官が、楊柳のもとで釣りをしている様子を描く。後者はロシア兵が捕虜となり、命が惜しいのはこの一枚の写真あるのみと、妻の様相を見るところが作品になっている。⑽ コマ絵について─政治に関する作品「米国陸相タフト氏の一行横浜に着す」(『戦時画報』61号、明治38年8月)では、米国の陸軍大臣タフトが横浜に着いた時の動向と周りのざわめきを、6点のコマ絵に分ける形で紹介している。⑾ コマ絵について─風俗に関する作品コマ絵において、最も多くの作品が出たのが風俗に関する作品である。現存するのは、日露開戦前の『近事画報』と、日露終戦後に『戦時画報』から復刊された同誌に

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