鹿島美術研究 年報第28号別冊(2011)
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― 601 ―し、ここに彼が訪れたヴェネツィアでの演劇経験を想定して初めて理解することができるはずである。以上、氏による長年のヴェネツィア絵画研究の蓄積をもって饒舌に語られ、パワーポイントで呈示された貴重な図版の数々でもって例証された。その結果、美術史学会会員および一般の参加者から多くの質問を頂き、氏の講演を盛況のうちに終えることができた。引き続いて、西洋美術館内レストラン「すいれん」にて、一時間半にわたり懇親会が行われた。アンダーソン氏とCIHA国内委員会委員、および高階秀爾・大原美術館館長のほか、西洋美術館におけるデューラー展担当者やアンダーソン氏講演の同時通訳者などを交え、美術史学会代表小佐野重利の司会でもって和やかな会が催された。アンダーソン氏は翌日に都内の美術館巡り(東京国立博物館、国立新美術館、森美術館など)、翌々日には鎌倉訪問、さらに12月10日より14日に名古屋におけるユネスコ会議に参加、その帰りに国際美術史学会委員会(CIHA)の委員であるペーター・ヨハンネス・シュネーマン氏、ティエリー・デュフレンヌ氏を交え、美術史学会の小佐野重利、秋山 聰、遠山公一、さらに田中英道、鈴木廣之両氏を含めて、会合を行った。これらの機会には、国際美術史学会の面々が強く希望した国内CIHA会員との連携が話し合われた。その内容に関しては以下に概略する。国際美術史学会は、2008年のメルボルン大会を開催した結果メルボルン大学のアンダーソン氏を会長に選出した。氏は大部な学会報告書(proceedings)を出版し、ニュルンベルクを開催地として次回の大会を2012年に予定しているほか、フィレンツェにおけるシンポジウムなど幾つかの学会を開催する。さらに、2016年には北京を舞台に大会が準備されるであろう。その北京大会の準備において日本側の意向を確認することが1つの目的であった。国際美術史画会は、人的交流の少ない北京での大会に懸念をもっており、事前に日本の美術史学会にも打診をしてきたが、日本側はむしろ北京大会に協力する姿勢を打ち出した。ここで日本側としては、2014年を目標にシンポジウムを行うことを提案している。長年の人的交流及び財政的支援を行ってきた日本側としては、北京大会に先立ち何らかの貢献をすることが望ましいと考えており、国際美術史学会側としても、経験のある日本での開催を優先したいというのが本音であることが確認された。もっとも、経済危機にある日本側は大会を主催する財政的余裕を持たず、国際美術史学会に協力するにしてもスポンサーを必要としていることを自覚している。この点については、日本美術史学会代表である小佐野重利を中心に状況打

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