― 603 ―ナ・シュトイエ博士と、5月12日および13日の二度に亘り、コンセプト紹介の文案の作成と、前提的な発表者の選抜の詰めを行った。次いで、準備会議の前日5月15日にもニュルンベルクにおいて、発表資料の最終的な整備を共同して行った。世界中の様々な宗教美術についての発表希望が寄せられており、国際美術史学会の主旨に適ったセクションとなることは自明であり、我々のプレゼンテーションは好意的に受け入れられたように思われる。ただ、二日間を予定しているセクションのうち、初日を非欧米圏の宗教美術に、二日目を欧米圏の宗教美術、疑似宗教美術にあてるという我々のプログラム案については、複数の参加者から異論が寄せられた。我々としてはこのように分離する方が専門的な議論が深められると考えたのだが、多くの他セクション・リーダー等からは分離せずに交互に混ぜ合わせる方がより面白いとの意見が寄せられた。国際美術史学会という性格を考えると、このような意見が出てくることは十分に理解できるものの、こうした意見に対して、どのように対処すべきかについては、なお検討中である。また我々のセクションに限らず、全体として日本および東アジア諸国からの応募件数が極端に少ないことが話題にのぼり、今後より効果的な広報体制を整備する必要が確認された。また、本会議中にアートマーケットに関わるセクションの担当者から、日本、東洋の状況に関する発表者確保についての助力を求められ、助言することとなった。なお、日本からはほかに立命館大学仲間裕子教授が、複製をテーマとする第13セクション「Multiple Art Work/Das multiple Kunstwerk」セクション・リーダーとして、またロンドン芸術大学の渡辺俊夫教授がイギリス・ビューローの代表として参加されており心強く感じられた。また、ウフィツィ美術館版画素描美術館長マルツィア・ファイエッティ氏、在フィレンツェ、ドイツ美術史研究所長ゲアハルト・ヴォルフ両氏も参加されており、将来的なシンポジウム企画の構想について意見を交わすことができた。最終日には国際美術史学会会長ジェイニー・アンダーソン氏、次期会長でゲルマン国立博物館長ウルリヒ・グロスマン氏、『アート・イン・トランスレーション』誌編集長でエジンバラ大学教授のジョン・ホワイト氏らとの会食を通じ、将来計画等について伺う機会を得、多々刺激を受けた。報告者の本来の研究分野である中近世ドイツ美術史に関しても、デューラーをテーマとする第14セクションの共同座長たるテキサス大学オースティン校教授ジェッフリー・チップス・スミス氏とゲルマン国立博物館学芸員ダニエル・ヘス氏と親しく議論する機会を得、大いに研究上の示唆を得ることができたのは幸いであった。
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