⑹ 蘇軾「書王定国所蔵烟江畳嶂図 王晋卿画」。 また竹浪遠氏は、三山型の主山の形状や王先の著録される作品に神仙的主題が見られることな⑺ 「煙江畳嶂図巻」では、江水上に二艘の舟が小さくかすむような姿を見せて、主山の方に向かっている。これらの船は、青緑山水の中にあって、多湿な空気にかすむようにおぼろげな白描風の表現をとっている。「煙江畳嶂図巻」は画絹の表面の擦れがやや強いので、白描風の表現が当初意図したところか即断は出来ないが、もし当初からのものだとすれば、「信貴山縁起絵巻」尼公巻の朝霧に包まれた老尼の描写とも共通しよう。大仏殿を出て信貴山へ向かう途中の老尼は、乳青白の虚空の中に白描で小さく二度描かれているのである。[付記]掲載図版は以下の諸書より複写した。図1、5 『国宝 信貴山縁起絵巻展図録』(サントリー美術館、1999年9月)。図2 『世界美術大全集東洋編2 秦・漢』(小学館、1998年9月)。図3、4 磯部彰編集『東アジア善本叢刊1 唐僧取経図冊』(二玄社、2001年1月)。図6 『世界美術大全集東洋編5 五代・北宋・遼・西夏』(小学館、1998年12月)。図7 『世界美術大全集東洋編3 三国・南北朝』(小学館、2000年11月)。図」に対して、「吹笙鳳鳴図」では山水画的な空間性が発達していることが分かる。この「吹笙鳳鳴図」は、簡略な画像塼であるため、雲気表現が独立した表現対象として十分に芸術的興味の下にあるとまでは言いきるには躊躇されるが、雲気文が、長く尾を引く特徴を保ったまま山水画の中に適応していく過程を示す事例と見なすことができよう。 さらに、本文で後述する『唐僧取経図冊』下冊第二図の雲気表現にもつながっていくと見て良いと思われる。どを根拠に、「煙江畳嶂図巻」に神仙山水の影響があることを積極的に認めている。 竹浪遠「王先『煙江畳嶂図』について─上海博物館所蔵・着色本、水墨本を中心に─」(『澄懐』2号、2001年9月)。― 8 ―
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