鹿島美術研究 年報第29号別冊(2012)
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⑵Lares⑶camilluscamillusとは儀式の際の助手のことを言い、その表現には二つのタイプが認められる。よく見られるタイプでは、花輪あるいはtaenia(細い髪紐)を斜め下に差し出した右手に持ち、盆あるいは皿を持ち上げた左手に持つ(注22)。一方、少数の作例に見られるもう一つのタイプでは、両手は下ろされ、何も持たずに表現される(注23)。二つに共通するのは、トゥニカを身に着けた従者と共に静止し、一つの作品(注24)を除いて右足に体重をかけて立つことである(注25)。〔図1〕のゲニウスの右側にはトゥニカ身に着けて腰にベルトを巻き、右手に花輪、左手に盆のようなものを持つcamillusが見られる。の壁画〔図1〕の中央には草木を背景に祭壇が表されているが、そのすぐ右側にゲニウスが表現されている。トガをまといベールを被ったゲニウスは右手に持つpatera(祭儀用の小皿)から祭壇へと献酒をしており、左手には豊穣の角を持っている。ラレス神は常に二人で表され、片手に持ったリュトンからワインをもう一方の手に持った器へ注ぐ様子で表現される(注20)。約8割の図像では、ラレスが正面観で内側を向いて立ち、片手に持つリュトンを高く上げ、もう一方の手に持つ器を腰の高さに持つ点において表現が一致している(注21)。服装に関しては、常に短いトゥニカを身に着け、一重あるいは二重のベルトを腰に巻く。頭髪は長く、花輪を被る。〔図1〕の左右の端にはラレスが表現されている。左端のラレスは右手に持つリュトンから左手の器へとワインを注ぐ。一方、右端のラレスは左端のラレスとは逆に、左手のリュトンから右手の器へとワインを注いでいる。⑷フルート奏者フルート奏者は側面観あるいは4分の3正面で、両手に持ったダブルフルートを演奏している様子で表現される(注26)。通常、静止した状態で表されるが(注27)、歩む様子のものも二例(注28)ある。服装に関してはトガかトゥニカを身に着ける(注29)。〔図1〕の祭壇の左側には、側面観でトガをまとって表された奏者がダブル・フルートを奏でる様子で表現される。― 240 ―

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