⑸popapopaは犠牲獣を先導する従者のことを言い、祭壇においてはほぼ同一の図像で表現される。すなわち、limus(前掛け)を身に着け、犠牲獣である豚の背後に立ち、片手で頭部を、もう一方で臀部を押さえて表される。いくつかの例ではculter(儀式用のナイフ)を片手に持つ。〔図1〕のフルート奏者の左側には、犠牲獣である豚を導き、上半身に何も身に着けていないpopaが認められる。⑹蛇蛇(注30)は多くの作例において、定型の表現により表される。すなわち、一匹あるいは二匹の蛇は植物を背景にして身をくねらせながら進み、松笠と卵が置かれた祭壇へ頭部を向けている。例えば、〔図1〕の下部には、祭壇に置かれた二つの卵と三つの松笠へ左右から頭部を向ける二匹の蛇が表現されている。蛇の意味に関して、ウィソヴァは蛇が子孫を繁栄させる力を持つゲニウスの象徴と考える(注31)。蛇はしばしば祭壇に二匹表されるが、それらは家長のゲニウスと妻ユノを表すと見なし、家長が未婚の場合は一匹の雄の蛇が表現されると考える。ボイスはこの見解は論拠に乏しいと指摘し、文献と考古学資料に基づいて蛇は場所を守護するゲニウス・ロキを表すと示唆する(注32)。⑺構図人物や動物の種類に関わらず、larariumには同様の構図が認められるとシェーファーは示唆する(注33)。多くの作例においては、無地の背景に人物群が同じ高さで、重なり合わないように間隔を空けて配置される。ゲニウスは固定式あるいは可動式の祭壇の前に立ち、右手に持つpateraから祭壇の火へ献酒をし、両端にはラレス神が表される。camillusはゲニウスの右隣に立ち、フルート奏者は祭壇の左側か背後に表される。popaは犠牲獣と共にフルート奏者と左側のラレスとの間、あるいは彼らの左側に表現される。そして、場面下には蛇が表現される。一例としてエフェボの家から発見された壁龕の周囲に表された壁画 〔図2〕(注34)を見てみたい。中央には、左手に豊穣の角を持ち、右手に持つpateraから祭壇へと献酒をするゲニウスが見られる。祭壇の反対側には、月桂樹の冠を被ってトゥニカをまといダブル・フルートを奏でるフルート奏者が立つ。その後ろには儀式の従者であるcamillusが続く。これら人物の両端にはラレスが認められる。右端のラレスは左手に持ったリュトンから右手に持った甕のようなものへとワインを注ぐ。一方、左端のラ― 241 ―
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