鹿島美術研究 年報第29号別冊(2012)
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B 馬にとって自然な楽な疾走で、馬上の人物は遠くを見ている。鐙に立ち、腰を浮C 鞍をつけていない裸馬に騎馬する図像で、柴田氏の解説によると、馬銜に反抗する馬を、坐骨を入れるとともに、脚で馬の腹を圧迫しながら手綱をひっぱらず口をだましつつ、馬銜を銜えさせようとしているところで、騎乗者の視線が馬の顔に向いているところから、馬の馬銜受けに注意を払っているところとされる。馬銜に対する直接の扶助ばかりでなく、背・坐骨・脚を同時に使って馬全体を統一させて手の内に入れようとしている。F 馬を大人しく留めている図か。この馬を見ている二人の人物もいることから、何G 牽き馬中、馬が後ろの何者かに恐れをなして乱れ足をし、油断していると起立しそうになるのを、引き手をもつ拳の操作で馬を前方へ誘導しつつ、全身の重心を進行方向へかけ左腕を張ることによって、急な起立に備えているところという。N 馬を牽きながら、馬と人物ともども後ろを振り返っている。O・P 馬をそれぞれ前後から見た図像。馬術的な意図はとくに見出せない。Q これも《随身庭騎絵巻》に見られ、馬の進路を変えようと手綱を引いている場面ある。かせてやや前掲姿勢で、具体的な馬術的な意図は不明。D 馬を落ち着いて歩かせているところか。E 馬を縄で捉えようとしている図か。中国の金代に馬を縄で捉える図があり、こういったものがルーツなのかもしれない。近世の「牧馬図」にも馬を捉える場面が見られる。かストーリーのある絵画の一場面から抜き取られたものかもしれない。H 馬がしりを跳ねようとしているところを、鞭で戒めている場面。I 馬が興奮して立ち上がりそうなところを抑えている。J Gの図像に類似。暴れそうな馬を誘導しているところだろう。K 興奮して入れ込んでいる馬を引き手が持って抑えていて、後方の人物はこの馬に乗ろうとしているようだ。これも先行絵画の一場面であったかもしれない。L 前方の人物の腕に馬が噛み付き、後方の人物が必死でそれを離そうと手綱を引っ張っている。M 《随身庭騎絵巻》にも見られる図像で、気合が入り、幾分入れ込んだ馬を頬革を持って牽いている姿である。という。R 馬が後ろ足を極端に跳ね上げたのを、騎乗者がしっかりとつかまっている。― 275 ―

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