T 《探幽縮図》のみに見られるもので、人物が伴わず馬のみが描かれている。U 人物がやや暴れ気味の馬を牽いている。貴人の前で馬を牽いている場面か。V 人物が馬を牽いている。人物は少年のような風貌で、馬も心なしか小柄で若い馬S 馬が後ろ足を跳ね上げようとしている図像だが、馬の前足が曲がっていてやや不自然な姿勢である。馬が乗り手の意に反して、背を丸めて跳ねようとしているのを乗りこなしているところだろうか。に見える。W 《随身庭騎絵巻》の秦久頼に似た図像で、馬が首を下げ前脚を曲げて勇んでいるところを、乗り手が手綱を引いて抑えている場面である。X 馬がやや暴れているところを、牽き手が手綱を引っ張って抑えている図像である。Y 馬を牽く人物を後ろからの視点で描いた図像である。Z 牛と旅人の図で、他の絵画からの混入と考えられる。以上の図像をあえて分類してみると、以下のように大別できよう。・直垂姿の武士が馬を歩かせたり走らせる図像:A B C D H・狩衣姿の人物が馬を乗りこなしたり調教する図像:I O Q R S W・馬を牽く図像:F G J K M N P U V X Y・その他(捉馬、人に噛み付く馬、馬単独):E L T Zこのうち、武士が調教する場面については、より実践的な馬術の一場面という印象を受ける。暴れ馬を乗りこなす図像については、《随身庭騎絵巻》や絵巻物の行列場面に見られるような、随身が暴れ馬を乗りこなす姿から由来したものであると考えられる。また、馬を牽く図像については、先行する絵画の何らかの一場面から集成したものではなかろうか。3、制作の背景と展開騎馬人物の列影図としてよく知られたものとしては、《随身庭騎絵巻》が挙げられよう。周知のとおり、いわゆる似絵の作例として実在した人物の面貌が描かれたもので、馬術そのものよりも馬に乗る人物が鑑賞の対象であったといえるだろう。その意味では、池田忍氏が紹介した《競馬絵》(逸翁美術館蔵)についても、具体的な随身の名前が記されていて、ある競馬行事に臨む随身の姿のみが抽出されて構成された画巻であると考えられることから、《随身庭騎絵巻》と同様の、馬を操る人物への興味― 276 ―
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