鹿島美術研究 年報第29号別冊(2012)
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ボッコラーリ文書に保管されており、特にカメリーノの視察記録についてはマチェラータ国立古文書館カメリーノ分館にも複写が保管されている(注4)。それでは、カメリーノでボッコラーリが視察した作品について見ていこう。2.ボッコラーリによる視察報告ボッコラーリは1810年6月8日付の報告書〔図4〕で、接収した絵画作品について次のように言及している。アントーニオ・ボッコラーリと教育省総務局の代理人数名は、ミラノの美術学校に収められる絵画をコムーネの聖堂で調べあげ、聖堂内で何らかの価値があり、美術学校へ輸送すべき作品を見出した。スペリメントの聖堂では、聖アウグスティヌスを描いた板絵を1枚発見し、この町のサン・ドメニコ聖堂では、8枚の様々なサイズの板絵を見つけた。1枚には聖母子が描かれ、他の2枚には3名の小さな人物像が描かれており、さらに1枚にはキリストの復活が、1枚には大天使ガブリエルが、1枚にはお告げを受けるマリアが、1枚には別の聖人とともに殉教者聖ピエトロが、1枚には聖ドメニコとともに聖グレゴリウスが描かれている。同じ場所には、司教座大聖堂が所蔵していた絵画が保管されており、異なる大きさで同じように板に描かれた絵画3枚(tre quadri equalmente dipinti inlegno sotto diverse dimensioni)を発見した。1枚には磔刑が、1枚には聖母子が、1枚には聖アウグスティヌスを伴う聖ヒエロニムスが描かれている。これらの3枚の絵は、上述したように、国有化されていない中央の司教座聖堂のものだが、代理人たちで、すでに国有化された3枚の絵、すなわちサン・カルロ聖堂にあった聖女テレサ、聖カルロの2枚と、コルディーボと呼ばれている聖堂内にあった、お告げを受けるマリアを描いた1枚と交換することにし、実際に、国有財産管理人たちが、取り決めた3点の絵画を上述の聖堂の者に引き渡すこととなった。[後略]このようにパネルのサイズや作者、内容の詳細は無いものの、カメリーノのスぺリメント聖堂から1枚、サン・ドメニコ聖堂から計11枚がミラノへ運搬するため接収されたことがわかる。その枚数と主題から、サン・ドメニコ聖堂で発見された11枚は、カルロ・クリヴェッリの《カメリーノのサン・ドメニコ祭壇画》のパネル8枚〔図1― 419 ―(注5、下線部は筆者による)

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