して衣の丸文の中にあらわされているといい(注15)、また、全体的に和様化した落ち着いた雰囲気をもつ。奈良・王龍寺羅漢像のように、直模したと考えられる作例があるものの、石川・天徳院羅漢像のように、これ以降の羅漢像は和様化が進み、また、安置場所も山門(三門)上とする場合が多い。このような中で、萬福寺十八羅漢像の図様は、伝統的な羅漢彫像の図様に、新たな1つの図様の組み合わせとして宗派を越えて受容された。その例として、以下では、京都・金戒光明寺十六羅漢像を取り上げたい。3、京都・金戒光明寺十六羅漢像について京都・金戒光明寺は、浄土宗大本山の寺院で、十六羅漢像の安置される山門は応仁の乱で焼失後、万延元年(1860)に再建、完成された。以下に、各像の像高と像容について簡単に述べていく。像高68.0センチ。顔を左に向け、口を開ける。左腕は屈臂し、肩の高さで掌を上に向けて龍鉢を執る。右腕は振り上げて、指を軽く曲げ、珠を執る。両足は外側に開いて踏み下げる。萬福寺第10尊者半託迦尊者像と共通する。像高68.0センチ。正面を向いて落ち着いた表情をみせる。剃髪とする。両肘を軽く曲げ、両手は袖の中に入れ、組む。袖の中に穴が開いており、如意を持物とする。脚を組んで結跏趺坐する。萬福寺第2尊者迦諾迦伐蹉尊者像と共通する。像高67.6センチ。正面を向く。頭頂部を盛り上げる。髭、眉毛を巻髪とする。開口し、上歯をあらわす。耳飾をつける。衣を両腕半分まで脱ぎ、肩を露わにする。両腕は屈臂し、胸の正面を両手で開け、中には如来頭部をあらわす。右足を前に結跏趺坐する。萬福寺第11尊者囉怙羅尊者像と共通する。像高67.6センチ。顔は右に向け、口角を上げ穏やかな表情をつくる。両腕を屈臂し、左胸の高さで香炉を執る。結跏趺坐する。萬福寺第12尊者那伽犀那尊者像と共通する。第1尊者 賓度羅跋羅惰尊者像第2尊者 迦諾迦伐蹉尊者像〔図5〕第3尊者 迦諾跋釐隋闇尊者像〔図6〕第4尊者 蘓賓陀尊者像〔図7〕― 480 ―
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