は、そこであらゆる大気現象が形成され、あらゆる音や変化が生じ、次いで地面に落ちる空気に似ている。最も高い段階にある人々は、天に近い、静穏で、明澄で、清浄で平和な、より高い圏界のエーテルに似ている(注17)。ここでシャロンは、人間と自然界、政治の世界を次のように類比的に捉えているのである。 精神 天 王 魂 身体 土 愚者 大気 中間の人々プッサンの提案にもかかわらずシャントルーには風景画は描かれなかったが、プッサンは人間と自然界をこのように類比的に捉えることで風景画を物語画に比肩する精神的な内容を盛り込むことができたのであった。前述の手紙が書かれた6月の少し前に5月にパリでフロンドの乱が勃発している。フロンドの乱に関わるプッサンの所感がシャントルー宛ての8月の書簡で披瀝されている。事実、そちらの出来事は私が安閑としているわけにはとても参りませんので、善良なフランス人として、数年前からの状況よりうまくやって欲しいと願わずにはいられません。(しばしば起こるように)この大きな混乱が何らかの良き改革のきっかけになりうるとするのなら、私個人としてはとても喜ばしいことです。思うに、善良な人ならだれでも同じような気持ちになることでしょう。しかし、私はこの世紀の邪さを危惧しています。徳、良識、信仰が人々の間から追放されています。蔓延ってるのは悪徳、ペテン、私欲だけです。全てが失われ、善などないとあきらめています。全て悪に充ち溢れています。人が手当てする療法も悪を取り除くには十分な効力を決して持ちません。その原因を取り除こうとしても時間の無駄です。腕が腐っているのに、指を切り落として何になりましょう。貴殿がご存じの其奴[パルティチェッリ・デムリ(マザランに見捨てられた財務総監)]の失脚などちっとも嬉しくありません、次に起こることを待ちかねていますから(注18)。― 493 ―
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