注⑴ ターナーの過去の巨匠との関係は個別の諸研究のほか、2009年にはまとまった展覧会が、さらにはオリンピックイヤーにあわせたナショナルな企画展として2012年にも展覧会が開催された。以下を参照。J. Ziff, ‘Turner and Poussin’, The Burlington Magazine, CV, 1963, pp. 315−21; M. Kitson, ‘Turner and Claude’, Turner Studies, II−2, 1983, pp.2−15; F. G. H. Bachrach, Turner’s Holland, London: Tate, 1994; D. Solkin, Turner and the Masters, London: Tate, 2009; I. Warrell, Turner Inspired in the Light of Claude, London: National Gallery, 2012.⑵ 一方で、色彩や空間表現の点に関してターナーの存在を際立たせ、後の時代の印象派や抽象表現主義の作品に結び付けて解釈されることも多い。以下を参照。K. Lochnan, Turner Whistler Monet, London: Tate, 2004; J. Lewison, Turner, Monet, Twombly: Later Paintings, London: Tate, 2012.⑶ 以下に議論するターナーの風景画における詩的要素の導入に関しては、次の拙論での議論に拠っている。出羽尚「ターナーの絵画制作における詩の役割」『國學院大學紀要』50号，2012年，1−26頁．⑷ ターナーの講義については以下を参照。D. S. MacColl, ‘Turner’s Lectures at the Academy’, The Burlington Magazine, XII, 1907−08, pp. 343−46; J. Ziff, ‘Backgrounds, Introductions of Architecture and Landscape: A Lecture by J. M. W. Turner’, Journal of the Warburg and Courtauld Institutes, XXVI, 1963, pp. 124−47; M. Davies, Turner as Professor: The Artist and Linear Perspective, London: Tate, 1992, pp. 15−29.⑸ British Library, Add. MS. 46151−C, n.d., ff.3v, 3. 引用の作成には以下を参考にした。Ziff, op.cit., ⑹ 同時代の美術理論に対するターナーの見解については以下を参照。B. Venning, ‘Turner’s Annotated Books: Opie’s ‘Lectures on Painting’ and Shee’s ‘Elements of Art’’, Turner Studies, 1982−83, II−1, pp. 36−46, II−2, pp. 40−49, III−1, pp. 33−44.⑺ British Library, Add. MS. 46151−K, n.d., f.22. 引用の作成には以下を参考にした。E. Shanes, ⑻ British Library, Add. MS. 46151−BB, n.d., f.22v. 引用の作成には以下を参考にした。Shanes, op.cit., ⑼ ターナーの風景画と詩との関係については以下を参照。J. Ziff, ‘J. M. W. Turner on Poetry and Painting’, Studies in Romanticism, III−4, 1964, pp. 193−215; J. Gage, Color in Turner: Poetry and Truth, New York: F. A. Praeger, 1969, pp. 132−35; Shanes, op.cit., 1990, pp. 47−94; A. Wilton, Painting and Turner’s Human Landscape, London: Heinemann, 1990, p. 74.1963, p. 127.1990, p. 47.以上のように、イギリス各地を題材に風景画を描いたターナーが、それぞれの土地に備わった文学、歴史、地誌に関わる連想を利用し、それを主題として取り込むことによって、詩と同じように、鑑賞者の精神を刺激するような風景画を制作していた点を確認した。ただし、ここでの研究は特定の作品に限って論じたものである。今後、彼の風景画における主題をさらに検討し、ターナーの画業を主題の取り扱いという点で包括的にとらえることで、西洋美術史上の彼の存在をさらに際立たせることが可能となるだろう。― 63 ―
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