中「蔵前(東京高等工芸学校)」の領域表2 香取秀真の芸術観と香取秀真の位置づけ※芸術観は時代ごとに変化するはずであり、また仮に同時代の発言・記述であっても、必ずしも一貫性があるとは限らないが、秀真の著書から読み取ることができる要素を表にした。「ジャンルのヒエラルキー」については、秀真が具体的に「上」などと述べている訳ではないが、わかりやすく示した。「香取の実作の位置づけ」以下は、筆者の解釈である。ジャンルのヒエラルキー教育(教養・技術)写実・写生・スケッチ文学的意味・文学性に関して日本の古典に対する評価秀真の実作の位置づけモダニズム秀真の社会的位置づけ、人間関係一般美術(絵画・彫刻等)上日本画家より洋画家の方が日本の古典を大切にしているとして評価。一般美術家としての教養と技術写実のみでも作品たり得る場合がある。写実に「文学的意味」を付すような陰影等は不要。タイトルにも文学性は不要。工芸美術(高級な工芸)上(最上?)帝展が最上(同じ作家が農展や商工展に出すものは落ちる)一般美術家としての教養と工芸家としての技術(一般美術家の技術より習得困難)身近なものの観察・写実が重要。(日本の工芸には古来そうしたモティーフが現れる)篆刻など、中国を範とすることが主流だったものに関しても、日本の美の独自性を評価。津田信夫と比較すると、日本東洋の美術・工芸の伝統を重視した作品を残した。モダニズムに反対する立場と思われているが、工芸美術というジャンルの独立性を重視したとも言える。日本を代表する実作者であり、他に並ぶ者のない金工史家。― 125 ―工芸(工業的工芸)工業的工芸家としての技術(教養は工芸美術の作家ほどは必要ない)古典への教養が必要だが、それに溺れてはいけない。(基本的には子規の立場と同じ)ただの写生でなく美感が感じられることが必要。(後のアララギ主流派とは異なる)アララギの万葉崇拝に対し、子規と万葉集の関係を冷静に記述していた。激しい感情表現で妻を詠んだり、今様を作ったり、写生だけでは捉えられない興味深い要素がある。正岡子規と親しく接したが、歌壇の中心となったアララギとは距離。田端文士村のかなり初期からの中心人物の一人。上短歌(文学の一種)
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