鹿島美術研究 年報第30号別冊(2013)
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⑵, 2001, p. 30.⑷Anon., “The Theme: News”, Rockefeller Center Magazine, 1⑶, 1938, p. 15.⑸Anon., “The Winner!”, Rockefeller Center Magazine, 1⑽, 1938, p. 15.⑹Anon., “Plaque Plan Changed: Noguchi Work to be in Steel instead of Bronze”, New York Times, Jul. 30,注⑴James Oles, “Noguchi in Mexico: International Themes for a Working-Class Market”, American Art, 15⑵Pam Meecham, “Realism and Modernism”, P. Wood (ed.), Varieties of Modernism, New Haven: YaleUniversity Press in association with the Open University, pp. 75−115.⑶Meecham, op. cit., p. 79; Pam Meecham, “Concord in Discord: Revisiting American Identities at Mid-Century”, PhD diss. Keele University, 2001.以上、イサム・ノグチが1930年代末に制作した《ニュース》というレリーフについて、コンペティションに出品された他の作例との比較から、まずノグチのレリーフにおいて「ニュース」という主題が、「現代性」と「主体性」というイメージを伴って表象されていることを指摘した。またこのイメージが、AP通信を紹介する『ロックフェラー・センター・マガジン』の記事から引用されたものであること、さらにこの引用の過程において衣服を取り去られたジャーナリストの身体が、当時アメリカ美術において多数描かれた「男性的な肉体労働者」と共通することを指摘した。また最後に、「現代性」と「主体性」を併せ持つ彼らの裸体の身体が、男性ヌードの孕む「他者」化のレトリックを逃れる点を指摘し、従来の肉体労働者像による階級表象との違いを示した。《ニュース》が制作された1930年代末は、それまで組織を作り政治的な活動に直接参加することも辞さなかった芸術家たちが、独ソ不可侵条約の締結を機に、こうした活動から次第に距離をとり始める時期に当たる(注25)。《メキシコの歴史》や《WarDepartment Buildingのための彫刻》等、手にする道具や衣服から労働者階級であることを読み取ることのできる作例とは対照的に、従来の階級表象を逸れた特徴を示す《ニュース》は、まさに転換点を迎えつつあるこの時代の文脈の中にノグチを位置づける作例と言えよう。その身体によって従来の肉体労働者のイメージを想起させつつも、同時に裸体によって階級を抽象化することで、本作のジャーナリストたちは、ゆるぎない自律性を持つ現代的な行為主体としての男性像に集約されてゆく。それは、階級の別よりも、アメリカのナショナル・アイデンティティとして批評に散見する「自由」や「民主主義」という観念にむしろ近接する本作の造形的な特質と言えるだろう。― 210 ―

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