鹿島美術研究 年報第30号別冊(2013)
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2.7 女性供養者第7身『題記』(1986)は「(袁)新婦令狐氏」と採録する。ペリオ(1907)も第1字に「袁」と記した後、この字の下方に疑問符を入れている。山崎(1995、2003)では第5字「狐」のつくりのアイコピーをとることができた〔図8〕。下野(2011)では「現状では判読不能」となっている(注20)。2.8 女性供養者第8身『題記』(1986)に「顔新婦張氏」と採録されている。ペリオ(1907)はやはり第5字の「氏」字の右上に点を入れて筆写している。2.9 女性供養者第9身2. 10 女性供養者第⑽身なお、史(1947)は本題記の位置を「本殿裡壁右列第七身題名」とするが、後述する女性供養者像第8身のカルトゥーシュ「顔新婦張氏」を「第九身」と見ていることから考えて、本題記は女性供養者第6身のものであると考えられる。ペリオは第6字の「氏」字の右上に、前述したような点を写しとっている。この第6字は山崎(1995、2003)ではすでに確認できなかった。史(1947)は第1字「顔」の「彦」の「彡」の部分を「⺡」としていて、これも異体字の問題として興味深い。謝(1955)はこの第1字を「顧」字と読んでいる。第1字の判読が「顔」と「顧」の2見解に分かれるのは、当該字の左半の字形がわかりづらいためだろう。下野(2011)は「第一字以外は明瞭に確認できる」としているが、菊地(2013)では山崎(1995、2003)における調査の記憶と記録に基づき、第1字右半の「頁」もなお確認できた。この第1字を含め、山崎(1995、2003)で採った全5文字のアイコピーを〔図9−1から9−5〕に示す。各研究者の記録に記述はない。下野(2011)は「榜題は判読不能」とする。各研究者の記録に記述はない。下野(2011)は「榜題に文字は見えない」とする。第8身の図像は同壁女性供養者列像の中で最も保存状態が良好であり、下野(2011)にはこの図像の「現地調査スケッチの描き起こし」が掲載されている(注21)。― 324 ―

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