鹿島美術研究 年報第30号別冊(2013)
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と隣接した「瀧野川区」、「小石川区」、「板橋区」、「淀橋区」、「本郷区」(注7)にも着目したいところだが、紙幅の都合で、それを整理してここに提示することはかなわなかった。ただ、駒込と雑司ヶ谷については、豊島区以外に本郷区、小石川区にも同じ地名があるため、本表に加え、現在の豊島区域に相当する地名を調査対象とした。すなわち、①の明治45年版については明治22年の市町村制が施かれた後の、北豊島郡の巣鴨村、巣鴨町、瀧野川村、板橋町、高田村、長崎村を対象とする。②昭和2年版では、町制施行後で豊島区が成立する以前の東京市外、巣鴨町、西巣鴨町、瀧野川町、高田町、長崎町、板橋町を対象とする。③昭和11年版では、豊島区が成立した後の駒込、巣鴨、西巣鴨、堀之内町、池袋、雑司ヶ谷、目白町、長崎東町、長崎南町、長崎仲町、日出町、高田本町、高田南町、千川町、板橋町、雑司ヶ谷町、瀧野川町が対象となる。居住地とその所属、専門領域に着目してみることは、池袋モンパルナスの実態を把握する上で、一つの有効な方法といえるだろう。〔表1〕を参照のこと。本表は、先述の『日本美術年鑑』三種類から、池袋とその周辺に在住した作家を、作家名五十音順に配列したものである。作家名は基本的に号を採録している。原則として掲載した事項は、すべて当該年鑑に依っている。また、三種類の年鑑で記述が異なる場合は併記しているが、その異同についての典拠は提示していない。師事・教育の項目については年鑑の記載を生かし、卒業に関しては「卒」と修了を意味するであろう「修」をそのまま採録した。誰々に「師事した」の表記は略した。一方ジャンルについては、漢字一文字に略記されたものの復元を図っている。東京美術学校の卒業年が記載されていても割愛した。略語についても当該年鑑の記載に従った。なお所属の項目には、作家が出品した展覧会と、所属する団体の両者を「。」で区切って併記した。すなわち「。」の前に出品歴、「。」の後に所属団体を記載した。紙幅の都合上、各典拠における所属は二項目までとし、それ以下を略した場合は末尾に「他」を付した。所属に関しては原則として年鑑に記載された順に掲載しているが、ジャーナリズムとの関連の問題もあり、編集にかかわる事項は優先している。こうしたリストは、典拠が何よりも重要だと考えている。典拠自体の間違いも指摘されるところではあるが、現在はそれも含めて典拠に負うものとする。なお、本表を制作するにあたって、典拠とした3件のうち、①については豊島区域に限定したが、②、③のうちいずれかにおいて池袋区域在住に該当する作家は、それ以外の典拠による居住地も採録に努めている(注8)。凡例的な説明はここまでとし、実際に表から考察できることをあげてみたい。― 408 ―

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