鹿島美術研究 年報第30号別冊(2013)
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⒂d'Harnoncourt to Kahnweiler, October 27, 1967(AHB, 12.Ⅱ.L)1965年当時、MoMAに収蔵されて⒃Kahnweiler to d'Harnoncourt, October 31, 1967(AHB, 12.Ⅱ.L)⒄Barr to Kahnweiler, November 8, 1967(AHB, 12.Ⅱ.L)⒅リストの一番初めに、Guitar 1912, Guitar 1914が並んで記され、以下まんべんなく制作年代をカバーした立体作品タイトルが並んでいる。また、すでに1966年1月の時点で、バーはこの作品の購入意志をカーンワイラーに示していた。AHB Travel Notebook(labeled 1966−67, Spain/Paris/Picasso), p. 13. (AHB, 9,E, Ⅰ)⒁この時も同様に、展覧会に伴い作品がピカソの手を離れるチャンスを見計らい、購入のための交渉をしようと計画していたようである。しかしながら立体作品の貸し出し自体が思うように実現せず、計画は失敗に終わった。この展覧会で展示された立体作品は27点、ブロンズ像17点のみであった。“I think you will remember, Henry, how urgently we – you and I – tried to borrow fromPicasso a really representative collection of his sculptures for our great exhibition to celebrate his 75thanniversary in 1957. We failed. (…)Over two hundred pieces belong to Picasso and they are all goingback to him. Furthermore, so far as we know now, they will remain in his own collection which, wesuppose, will stay in Europe.(…)” Barr to Kahnweiler, November 8, 1967(AHB, 12.Ⅱ.L)いたピカソ立体作品はわずかに7点、絵画作品は35点であった。⒆本調査の対象とは異なるが、1967年の展覧会の実施後半よりキュレーター、ウィリアム・ルービンがチームの一員として加わるようになり、後にピカソからギターを受け取ることになる。ルービンの残した記録文書も同様にMoMA Archiveに所蔵されているが、2013年現在公開には至っていない。Picasso: Guitars 1912−1914, Museum of Modern Art: New York, 2010.⒇“Picasso at Seventy-Five,” Art and Culture, Beacon Press, 1961(1989), pp. 59−69. ただし、グリーンバーグだけがピカソにこのような批判を浴びせていたわけではない。特に第二次世界大戦以降のピカソ・バッシングについては以下を参照のこと。Marie-Noelle Delorme, “Picasso:Acclamation and Deprecation,” pp. 256−267. in: Werner Spies ed., Picasso: Painting against Time,Germany: Hatje Cantz, 2007. “ヴァロリスの時代がピカソにおける古典的彫刻家の完成であるとすれば、カンヌのラ・カリフォルニー荘での仕事は(引用者註:ピカソがカンヌに居を構えたのは1950年代後半のこと)、1912年という早い時期に《ギター》を発明した彫刻家による究極の探究を形作る”ピエール・デクス、太田泰人訳「ピカソの近代彫刻の革新」『ピカソ全集9 彫刻』講談社、1981年、118頁(Pierre Daix, “Picasso et l’invention de la sculpture moderne,” Jean Cassou, Pablo Picasso, Paris,1975, pp. 123−144.) キュビスムにとって「折り」の構造がその発展に不可欠な要素であったことは、すでに指摘されているとおりである。河本真理は、ピカソによる初期キュビスムのいくつかの風景画に見られる風景の前景と後景の間を短縮して合成して描く手法を、「風景を折り畳んでいる」と描写している。このようにしてピカソによって二次元的に絵画の中に「折り畳まれた」現実の風景は、三次元的な階段状の形状を伴って、その後《キュビスムのりんご》と呼ばれる丸彫り彫刻や、ギターのコンストラクションに導入されていることが指摘されている。河本真理「ピカソ<折り畳まれた>アッサンブラージュ オルタ・デ・エブロから《ギター》(1912年)まで」『ユリイカ』2008年11月、pp. 95−104.:河本真理『切断の時代 20世紀におけるコラージュの美学と歴史』ブリュッケ、2007年. このようなヴォリュームの逆転と、虚空(Void)によって量塊(Mass)を表現するという手法― 428 ―

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