a)概要:聖堂の歴史的な背景、窓の形状・修復・改変状況、様式etc.b)主題:聖ヨハネ伝場面の主題(注3)c)文献:Corpus Vitrearumを基本に簡単な文献紹介現地調査の結果、中世以来の度重なる修復・配置転換等により元の状態を復元するのが困難な例が予想外に多く、場面の同定も不可能に近いケースもあることが実感された。ともあれ困難な状況はそれとして、現状に即して正確な記録を残すことに努めたい。基本的な研究としてコレット・マネスC. Manhes(1993年)の提示した15例を基礎とし(注4)、実際の現場で確認しながら再検討を行った。結果、今回新たに2例を加えることができた(注5)。現在まで確認された中世の《聖ヨハネ伝の窓》は計17例である。以下紙幅の都合で詳細は省くが、カラー版冊子『カタログ 聖ヨハネ伝の窓』の一部を抜粋しつつ、年代の異なる3例を取り上げてここに紹介する。 中世のステンドグラス《聖ヨハネ伝の窓》に関する総合的研究研 究 者:清泉女子大学 文学部 教授 高 野 禎 子序シャルトルやブールジュをはじめとするフランスやイギリスのゴシック聖堂には、《La Fenêtre de la Vie de Saint-Jean l’Evangéliste 福音書記者聖ヨハネ伝の窓》と呼ばれる一群のステンドグラスがある。2006年の夏以来シャルトル大聖堂の《聖ヨハネ伝の窓Baie48》を中心に、フランス各地に残る同主題の窓を訪ねて現地調査を行ってきたが、この度新たな調査により2例を加えて、一冊のカタログにまとめることができた(注1)。本研究はフランス国内でも未だ手がつけられておらず、カラー図版と詳細な解説を伴うカタログ作成により、「ヨハネ黙示録」関連の研究に大いに役立つことが期待されよう(注2)。特にゴシック大聖堂の薔薇窓の「黙示録」や正面扉口に表される「最後の審判」など終末論に関わる大テーマとの関連で、今後の研究に資するはずである。『カタログ』としてまとめた基本事項は、以下の通りである。・窓の基本データ:聖堂の名称、窓の位置、制作年代、窓全体の大きさ、場面数Ⅰ 「黙示録」著者にして福音書記者のヨハネ西洋中世において聖ヨハネの存在は特別な意味を持っていた。ヨハネはキリストの生涯と事跡を著わした四福音書記者の一人であり、かつまた新約聖書の末尾を飾る― 457 ―
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