鹿島美術研究 年報第30号別冊(2013)
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⑵ ⑶ 寄進者像;盾職人と鐙職人 建築物の下で2人の職人が作業に従事する。左の盾職人は細い列柱のある屋根の下で盾の表面仕上げを行い、次の場面では鐙師が2人で共同作業をする。▪ 構造 窓は尖頭アーチ型で構成は次の通り。窓全体に内接する6個の円を上下に③主題の多様性描かれる主題には多様性が認められる。各主題の登場頻度を『カタログ』末尾に添付した主題一覧より主なものを列挙してみよう。a)パトモス島への旅立ち、黙示録の執筆b)ラティナ門での油刑c)アリストデモスの前で毒杯をあおぐd)ドルシアナの蘇生e)小石を宝石に、薪を黄金に変える奇跡f)ヨハネの栄光にみちた死④ 『カタログ』抄 ─シャルトル大聖堂《聖ヨハネ伝の窓》〔図2〕─ 〔1200−1215頃、7.85×1.88m、16場面〕重ね、2つの円の接点を中心とするやや小型の四葉形を配置する。▪ディスクリプション⑴エジプト逃避 再利用のガラス;イエスを抱いた聖母が驢馬に乗り、後ろを振り返りつつ導くヨセフ⑷パトモス島への追放 荒波にもまれつつ一艘の船が海に出る。ヨハネと従者が活発に会話を交わしており、船頭は懸命に帆を操っている。ヨハネと船頭の顔部は13世紀だが、船帆の黄ガラスは15世紀の修復。⑸黙示録を執筆するヨハネヨハネの周囲には先端に十字架のついた7基の教会の塔が見える。色とりどりの塔は、ヨハネが書簡を送るアジアの7教会を表わす。ヨハネの頭部は14世紀、巻物の銘文とヨハネの全身を囲む青い光背は15世紀。⑹ドルシアナの蘇生〔図3〕 ドミティアヌス帝の死後、流刑地パトモス島からエフェソスに帰還したヨハネは女性信者ドルシアナを蘇らせる。彼女は師の帰国を待ち望んでいたが願い虚しく死去。生前施しを受けた貧民達が彼女を蘇らせるようヨハネに頼む。ヨハネが「私のために食事の支度をせよ」と命じると、死んだはずのドルシアナは死の床から起き出して台所に向かった、と聖者― 459 ―17例中12例17例中11例17例中10例17例中7例17例中8例17例中10例

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