⒄ ⒅ 香を振る天使達⒆ヨハネの魂を迎える天使達 最頂部の2天使は両手を伸ばしてヨハネを天上覗かせている。神の手が雲間から現れてヨハネを加護。ヨハネの頭上や大祭司の足元など背景地の青ガラスに外付けグリザーユの唐草装飾が施されている(注9)。⒂キリストとヨハネの出会い〔図10〕 青地を背景にしてキリストとヨハネが出会う重要な場面。右に立つキリストは十字光輪をつけ、右手を祝福の身振り、左手には書物を持つ。一方のヨハネはキリストと対話するような姿で腰をかがめ恭しい仕草で向き合っている。キリストの全身を覆う身光は15世紀の修復。マネス等によるとこの場面は高齢になったヨハネの元にキリストが現れ、死期の近いことを告げると解されているが、疑問あり(注10)。銘文S(an)C(tu)SIOH(ann)ES XP(isti)は13世紀。青ガラスに外付けの唐草模様が施されている。⒃石棺の中で祈り、栄光の死を迎えるヨハネ〔図10〕 キリストから死の告知を受けたヨハネは墓を掘って横たわり死を迎える。赤い光線がヨハネの頭上に降り注いでいる。界へと迎えている(注11)。以上シャルトルの各場面を辿ると、パトモス島への追放に始まり、数々の奇跡(死者の蘇生、クラトンとの対話、宝石を元通りに蘇らせ、薪・貝殻を黄金・宝石に変える)を経てヨハネは毒杯を仰いでも死すことなく、主の加護を受けて安らかな最期を迎える。中でもヨハネがキリストと直接にまみえる光景は印象的であった。シャルトルの窓が目下のところ最も古く保存状態最も良い作例である(注12)。⑤カタログ抄 ─トゥール大聖堂《聖ヨハネ伝の窓》(その1)─ 〔1225−30頃(注13) コルプスでは1250頃?、7×1.6m、17場面〕▪ 概要 2006年夏、現地調査の折にトゥール大聖堂〔図5〕では二つの窓が存在することを知った。一つは本来この聖堂のために作られた窓《Baie212》であり、もう一つは別系統の窓《Baie3》である〔図6〕。後者は聖マルタン聖堂にかつて在ったものと推測される。大聖堂はかつて聖モリスに献じられ、14世紀になって聖ガシアンに変更された。1810年に聖ジュリアン聖堂から窓のパネル60枚が移設され、これらの中に聖マルタンの窓も混在していたと考えられている(注14)。聖マルタン聖堂は初期キリスト教時代からガリア地方のキリスト教化に重要な役割を果たした。5世紀の創建以来、幾度かの改築を経て12世紀にはサンティヤゴ― 461 ―
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