▪ 構成 窓の形状は4つのランセットが一組となっており、円と正方形が重ねられた枠内に6層の区画を配置する。「福音書記者聖ヨハネ伝」は下から3層目の左から始まり6層目の右端で終わる。▪ 構成 窓は尖塔アーチ型で、中軸上に四方形を90度回転して配置し、中間層には四葉形の半分ずつを左右に分けて置く。偶数層には1区画、奇数層に2区画の構成で全部で13層になる。背景は全て青地。▪ 主題 左から右、下から上へと順に読み解く。⑴2天使(20世紀の後補)、⑵祈る寄進者祭壇の前に跪いて祈る聖人、⑶王と毒杯をあおぐ人物王杖を手にしたアリストデモスが毒を飲ませて2人を死に至らしめる、⑷王が毒を準備させるバケツに毒蛇を入れて砕き、毒杯の準備を召使命じる王、⑸皇帝の前に出廷するヨハネ皇帝ドミティアヌスの前で腰をかがめているヨハネ、⑹毒杯をあおぐ〔図7左〕王の前に立ち、毒杯をあおぐヨハネ、⑺死者の蘇生〔図7右〕毒杯を飲んでもヨハネは死なず、死者の蘇生を行う、⑻薪を黄金に変える奇跡黄色の束が下に見えており、杯を持つ右の王らしき人物にヨハネは右手をあげている、⑼ヨハネの説教左にヨハネが立ち、2人の人物に右手で何かを語りかけている、⑽槍を持つ2人の兵士達、⑾磔刑図(他からの移設品?)、⑿パトモス島への旅立ち白い帆のある船に乗るヨハネ、⒀黙示録の執筆(20世紀の後補)白い巻物に黙示録を著わす、⒁皇帝の前に出頭するヨハネ左に皇帝が座り、その前に赤い光輪のヨハネが立つ、⒂ラティナ門での油刑王杖を持つ王が兵士にヨハネの油刑を命じる、⒃油刑油桶の中に半身を浸すヨハネとふいごで火をおこす兵士、⒄ヨハネのミサ聖杯ののった祭壇の前で助祭を従えたヨハネはミサを行う、⒅⒆香をふる天使達▪ 概要 同じトゥール大聖堂にはもう一つの窓がある。内陣高窓《Baie 212》で、「洗礼者と福音書記者2人のヨハネ伝」が一体化した窓である。下3分の1に「洗礼者ヨハネ伝」、上3分の2に「福音書記者ヨハネ伝」が置かれており、他に類例のない《2人のヨハネ伝の窓》である。・ 第3層 ⑴王の前に立つヨハネ/⑵王とヨハネ/⑶召使に毒杯の準備をさせる巡礼路を代表する聖地として有名になった。今日の大聖堂内陣の窓の配置は極めて複雑で、移設の経緯、制作年代、図像プログラムの考察は困難を極める。⑥『カタログ』抄 ─トゥール大聖堂の窓(その2)〔図8〕─ 〔1275年以前、10.5×3.2m、12場面〕▪主題 第3層〜6層目― 462 ―
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