鹿島美術研究 年報第30号別冊(2013)
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1.2012年度援助〔2012年6月8日〜17日〕期   間:2012年6月8日〜17日、2013年1月22日〜2月2日出 張 国:フランス報 告 者:帝塚山学院大学 非常勤講師  田 辺 めぐみ1.シンポジウム今回の海外派遣における主目的は、6月13日から15日にフランス国立アンジェ大学で開催されたシンポジウムTraces du végétal(植物の形跡)での研究発表にあった(注1)。フランスでは今や珍しくもなくなった学際シンポジウムではあるが、これほど多くの領域・分野を巻き込んで開催されるものは前代未聞とのこと。準備は2010年6月に開催された研究会Cultures du Végétal以来、入念に進められてきたという(注2)。当該シンポジウムへの参加を希望したのは、本報告者が博士論文以来植物装飾の研究に従事している所以であったが(注3)、日本で開催される学際シンポジウムや研究会の運営方法に問題が多いと感じていたためでもあった。今回のシンポジウムに学んだことは以下のとおりである。まずはシンポジウム運営上における関係者の大変細やかな配慮である。シンポジウムでの研究発表は、分野・時代をほぼ同じくしている2、3名の研究者ごとにまとめられ、その主題に適した司会者が招かれていたため、明快な指南のもとで活発な質疑応答が行われた。発表者の研究業績は司会者から紹介される他、著作物がシンポジウム関連の書籍と共に展示・販売されていたため、それぞれの方向性や各分野の研究動向を知ることが出来た。また、「植物の形跡」が異なる分野・領域から論じられることにより、多種多様な視座や方法論に新鮮な驚きを覚えることも少なくなかった。特に地理学者・心理学者― 579 ―⑴ 海外派遣① 「15世紀ブルターニュ時祷書に見る余白装飾の諸相」Ⅱ.「美術に関する国際交流援助」研究報告

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