鹿島美術研究 年報第30号別冊(2013)
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ろが大きいとはいえ、今回のシンポジウム開催期間中幾度と無く言及された様々な「極意」を今後実りある成果につなげていくつもりである。2.調査・研究フランス国立図書館リシュリュー館では、写本のマイクロフィルムと展覧会カタログの参照、同図書館フランソワ・ミッテラン館とフランス国立美術史研究所図書館では、シンポジウムでの発表内容の確認・修正をおこなった。なお、予定していたブロワ城資料室での調査・研究は日程変更で調整がつかず、今回は実施できなかった。3.展覧会派遣期間中に開催されていた写本画関連の展覧会のうち(注5)、予定していた3つを鑑賞することができた。ルーヴル美術館では、ニューヨークのメトロポリタン美術館が所蔵するLes Belles Heuresの47葉が展示されていた(注6)。ベリー公が所持していた数多くの時祷書の内、唯一全てランブール兄弟の手によるという彩飾を細部まで鑑賞できる大変貴重な展覧会であった。フランス国立図書館で開催されていた展覧会Miniatures flamandesは、15世紀ブルゴーニュ公の蔵書を中心に90ものフランドル彩飾写本で構成されており、評判の高さを確認させるものであった(注7)。そしてトゥール市美術館で開催されていたTours 1500. Capitale des artsでは、同美術館の所蔵品と広く内外から貸与された写本や板絵・彫刻など様々な作品を展示することにより、15世紀半ばから16世紀初頭にかけてトゥールで繰り広げられた活発な芸術活動を総体的に把握せしめる展覧会となっていた(注8)。4.面談非常に慌しい今回の海外派遣日程の合間をぬい、以下3名との面談を実現させ、各方面の動向を伺うことが出来た。現在サントメー群図書館の古文書部門責任者を務めるレミ・コードニエ氏には、同図書館が所蔵する写本の調査・研究の進展状況を伺った。写本のデジタル化が着実にすすめられており、その成果は図書館のホームページで参照可能(注9)。カリーヌ・ルケ=ブリュタン氏は長年パリ国際大学都市で、外国人学生に修士・博士論文の論述形式を指導されてきた。本報告者は現在語学教育に携っているため、美術史の知識を有効に利用しながら初級・中級レベルのフランス語を教授するための手段や方法に関する助言を面談にて請うた。なお、彼女が来年1月でパリ国際大学都市― 581 ―

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