鹿島美術研究 年報第30号別冊(2013)
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一方、今回の講演者5名の発表は『周辺』という共通主題が様々に解釈されていた上、分野・領域が広範囲に及んだため、充分な理解に至れないものもあった。耳慣れないイギリス英語による発表では、フランス語の配布資料やパワーポイントの要点表示に助けられながら大要を追うに終始し、今後関連分野への知識を深めることのみならず、学術交流に不可欠な英語の実用化を図る必要性を再認識した次第である。発表報告集は2013年10月、及び2014年5月に新たな講演者を迎えて開催される同主題のセミナーの後、公刊予定。2.メネストレル総会・研究会(於:フランス国立図書館)中世研究に関する様々な情報をインターネット上で提供することを目的として、1997年に立ち上げられたポータルサイト「メネストレル」では(注4)、ヨーロッパ諸国を中心にアジア・アメリカ・中近東などで活躍する中世研究者によって各国の研究・教育の現況が報告されている。本報告者はメネストレル運営者の依頼で2012年2月以来日本部門を担当しているため(注5)、その簡単な紹介と2013年度に予定している掲載事項の報告を求められた。総会・研究会には西洋中世研究・教育機関に属する多くの関係者が出席し、メネストレル運営状況の確認と問題点、そして今後の課題などが社会科学高等研究院(E.H.E.S.S.)のジャン=クロード・シュミット教授をはじめとする学術顧問の先生方を中心に討議された。午後には十数部門の担当者によって、各部門の成り立ちと内容、及びその用途などが明瞭に説明され、メネストレルに提供されている情報の有益性を再確認せしめた。現在のところ掲載事項の多くがフランス語のみで記載されているという支障は否めないが、日本の研究者にも大いに活用していただきたい。3.研究会『中世におけるモノ』(於:レンヌ第二大学中世テキスト研究所)レンヌ第二大学の中世テキスト研究所(CETM)が主催するセミナー・研究会では、様々な主題のもとに多分野からの専門家が招聘され、学際的な論議が活発におこなわれていることをフランスの同輩から聞き及んでいたため、今回の参加となった(注6)。本報告者が聴講した午前の2発表では、考古学者と文学者によって「ロマネスク彫刻」と「異界の表象」を対象に「モノ」の領域横断的な考察が展開された。質疑応答の際には異なる分野からの見解が表明されたが、時間の都合で十分な議論には至らず、午後の部に参加できなかったことが悔やまれた。― 584 ―

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