鹿島美術研究 年報第30号別冊(2013)
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─La cuisine au Moyen Age(ジャン無畏公の塔)─Le Roman de la rose −l’art d’aimer au Moyen Age−(アルスナル図書館)─Des fleurs en hiver(ドラクロワ美術館)─Les Rothschild en France au XIXe siècle(フランス国立図書館)19世紀の大富豪として名をはせたロスチャイルド家に関する展覧会。同家が出資した様々な事業や、同家と親しくしていた当時の画家・作家・音楽家に関するもの、さらにはフランス国立図書館に寄贈された同家の写本コレクションのうち、彩飾豊かな数点が展示されていた。13世紀に執筆され、多くの読者を生んだ『薔薇物語』を多数所蔵するフランス国立図書館のコレクションを中心に、百点有余の写本・揺籃期本が展示されていた。それらに施された彩飾によって物語の重要な場面や文化的背景、さらにはその生成・受容形態を容易に把握できるよう配慮されていた(注10)。ご婦人の団体が、写本彩飾の水彩模写に励んでおられたのには驚いた。中世の料理に関する展覧会。異なる階級や季節の食事習慣や調理法・食事療法などが、パネルで明瞭に提示されていた。社会科学高等研究院の研究員であるダニエル・アレクサンドル=ビドン氏監修のもと、中世世界のより良き理解をうながす展覧会も今回で10主題を数えるまでとなった。パネルは貸し出し可能となっているため、既にフランス国内で巡回展示されたものもある。日本でも是非実現させたいものである。ドラクロワのアパート・アトリエをもとにした美術館にある庭園の改修を記念し、「花」を主題とする画家の作品が、フランスはもとよりヨーロッパ・アメリカから初めて集められた。昨今常用されている展示方法にならい、同主題を扱った現代作家の作品と並置することにより「花」という古今東西慣れ親しまれてきたテーマの多様な解釈が浮き彫りにされ、興味深い展示空間となっていた。5.研究ブレストでの研究発表前に、フランス国立図書館とレンヌ市立図書館で原稿内容の確認と見直しを行ったが、その後のパリ滞在中に体調を崩し、当地で予定していた関連調査・研究は最低限に留めざるを得なかった。― 586 ―

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