鹿島美術研究 年報第30号別冊(2013)
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9人、30代:8人として幅広い年齢層の研究者によって発表が行われていたことが分かる。これは討論会自体の質と関わるものであり、若手からベテランの研究者による発表が行われることにより、会議が形式的にならず、議論を活発化させる結果を生む。今回は、上は敦煌研究の草創期から研究に携わってきた敦煌研究院の樊錦詩院長から下は最近まで大学院生であった日中の研究者によって発表メンバーが構成されており、やはり発表傾向が一定方向に偏らず全体として良いバランスを見せ、また発表者同士が問題意識を刺激し合う様子が頻繁に見られた。また30代、40代の若手、中堅の研究者の参加が多いことも特に注目に値する。日本の若手、中堅のシルクロード美術史研究者は本会議に出席した者でほぼ全てであり、それを考慮すると人数の少なさが明らかであるが、それと同時にこの統計は、これから成長が期待される若手、そして現在最も意欲的に研究活動を行っている中堅の研究者が今なお存在し、また彼らが国際的に協力し合う研究、発表の場を求めていることを示していると思われる。以上、本会議は国、分野、年代の枠を越えて日本において行われたものとして大いに意義のあるものであり、上記の成果は今後のシルクロード、敦煌研究に資するものとなるであろう。また本会議は、参加者全員が協力し合い、一丸となって作り上げたものであり、それは即ちシルクロード研究を担う研究者の情熱を象徴するものであり、そして今後まだまだ当該分野が発展する兆しの現れであると言える。期   間:2012年9月11日会   場:東京、日仏会館フランス事務所報 告 者:青山学院女子短期大学 教授  大 野 芳 材講師のピエール・ローザンベール氏は、フランスの17・18世紀美術研究の第一人者であり、氏が総合監修を務めた「シャルダン展」(三菱一号館美術館、9月8日より)の開会式に来日したのを機に、プッサンについての講演が行われた。氏は1936年にパリに生まれ、ルーヴル美術館の学芸員として活動を始めて、絵画部長を経て、1994年からルーヴル美術館総裁・館長に就任した。2001年に退任後は、同館名誉総裁・館長として、執筆や展覧会の企画監修などに精力的な活動を続けている。また1995年にはアカデミー・フランセーズ会員に選ばれている。ローザンベール氏はルーヴル美術館に在職中に、シャルダン、ヴァトー、フラゴナ― 591 ―② 日仏美術学会講演会「プッサン、研究の現状(Poussin: Present State of Research)」

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