鹿島美術研究 年報第30号別冊(2013)
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に基づく視覚上の表明ではないかと推論している。以上、マリーアス教授を中心にエル・グレコ研究の現在を、様々な研究経歴を持つ報告者により多彩な視座が提供され、また高階秀爾、坂本満、田中英道そのほか数多くの専門家の参加を得て、本シンポジウムは盛会のうちに無事幕を閉じることができた。最後に、来年の2014年にはスペインのトレードにおいて、さらに本格的な国際シンポジウムが企画されており、このシンポジウムはその意味においても、有意義なものであったとマリーアスから最後にコメントを頂戴して締めくくられた。期   間:2012年6月1日〜7月31日(61日間)招致研究者:米国、ハーヴァード大学 教授  ユキオ・リピット報 告 者:東京大学大学院 人文社会系研究科 教授  佐 藤 康 宏ユキオ・リピット教授は以下のような4項目にわたる研究活動を精力的に行った。それぞれの研究成果はすべて2014年に発表される予定である。⑴ 月庵宗光の頂相群の調査・永徳2年自賛の「月庵宗光像」(松山市最明寺)の作品調査・永徳3年自賛の「月庵宗光像」(豊岡市円通寺)の作品調査及び資料調査・室町時代の「月庵宗光像」(京都市個人蔵)の作品調査このほか頂相や肖像画に関する一次資料、二次資料を東京大学資料編纂所、東京大学文学部図書館、東京大学文学部美術史学研究室、東京文化財研究所で行った。月庵宗光(1326−1389)は南北朝時代の禅僧で、但馬(兵庫県)に大明寺を創建し、主語大名山名氏の帰依を受けて円通寺を開き、14世紀の第三四半期における禅宗の地方への普及に大きな役割を果たした。フリーアギャラリーの所蔵する「月庵宗光像」は海外に流出した頂相の中では、「春屋妙葩像」(バーネット・バート氏蔵)とともに最も制作時期が古いものであり、かつ自賛像であることが注目される。このフリーアギャラリー所蔵本を研究するための関連資料の調査であった。― 598 ―(文責 大髙保二郎)⑶ 外国人研究者招致① 「月庵宗光の頂相群の調査等のため」

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