鹿島美術研究 年報第30号別冊(2013)
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図書館、東京大学部文学部美術史学研究室、東京文化財研究所で「波岸図」受容史関連の一次資料、二次資料の調査を行った。この研究成果は、2014年刊行のImpression誌上に発表される。なお、このほか、東京大学文学部美術史学研究室主催の講演会「ワシントンの若冲、アメリカの日本美術史」(東京大学法文2号館1番大教室、2012年9月14日)では、辻惟雄氏(MIHO MUSEUM館長、東京大学名誉教授)が「日本美術とアメリカ―私の個人的体験」と題して話された後、リピット教授は「ワシントンの『動植綵絵』展─アメリカにおける日本美術史研究の将来に向けて」という講演を日本語でされた。この講演会は招致期間の後に開かれたものだが、⑶の項目に関連する。ワシントンのナショナル・ギャラリーが、展覧会に合わせて企画したのが、「江戸の芸術家」のシンポジウムであり、その報告書のためにリピット教授は自ら序文を執筆するほか日本人研究者6名の原稿を英訳する仕事にも従事している。招致期間中には、その関係の連絡も行うことができた。中心となって実現した展覧会の経緯を述べる中でシンポジウムについても触れられていた。期  間:2013年3月5日〜3月14日(10日間)招致研究者:英国、ケント大学 教授  トーマス・ヘンリー報 告 者:国立西洋美術館 主任研究員 渡 辺 晋 輔今回、ラファエロ展に関連してトム・ヘンリー教授を招聘し、出品作に関連した講演を行っていただいたが、講演そのものはもとより、美術史研究者およびマスコミとの交流を通じて、多くの刺激がもたらされた。以下、①講演について、②研究者・美術関係者との交流、③その他の活動、の順に、ヘンリー教授の日本滞在中の活動を報告する。1 講演についてヘンリー教授は3月9日㈯の午後に、国立西洋美術館の講堂において「ラファエロ作《友人のいる自画像》の新解釈」と題した90分間の講演を行った(同時通訳付)。講演はラファエロ工房の活動について紹介したのちに、工房を主導した画家であるジ― 600 ―② 「ラファエロ作《友人のいる自画像》の新解釈」

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