写して、新たに約600点のデジタル画像を作成した。全遺品写真を分類するにあたり、画像データをもとに手札サイズの写真を新たに焼いた。それらを時代や種類ごとに仕分けし、複数ある同じ写真を除き、整理した。その内訳、数をまとめたのが、〔表1〕である。項目は年代ごとに整理して、時代区分は富本自身が『富本憲吉作陶四十五年記念展』(昭和30年)で居住場所と年代をもとに分けた「大和(安堵)時代」「東京(祖師谷)時代」「京都時代」を基本とし、ほかに「留学時代」「作品など」の項目を設けた。また現状では特定できない人物や風景、留学中に富本が海外で購入したと思われる絵はがき、富本や友人たちが記した絵はがき(注7)、ネガフィルムなどは、まとめて一つの項目に入れた。写真の場所や年代特定は、以下の方法で行った。① 過去の文献資料に掲載された写真との照合『モダンデザインの先駆者 富本憲吉展』の「主要参考文献」に掲載した文献を見直して、戦前に発行された関連書籍や雑誌記事の写真と、遺品写真とを照合させた。その結果、大正6年(1917)から昭和10年代の書籍、雑誌に掲載された写真と、遺品写真の一部が一致していることが判明した。それらの写真をもとに、他の遺品写真の中から類似するものを探して、場所や年代を推定し分類した。② 過去の展覧会目録、図録、作品集に掲載された作品写真との照合富本の生前、没後を含む大量の展覧会図録、目録、作品集、画集に掲載された作品写真と、遺品写真とを照合した。これにより、『富本憲吉陶器集第壱冊』(昭和8年)、『富本憲吉新作陶磁展図録』(昭和10年11月)の掲載写真が、遺品写真に含まれていることが判明した。このうち『富本憲吉新作陶磁展図録』と一致する遺品写真は、ネガフィルムとして富本家に遺っていたものなので、富本自身が撮影し、図録写真として用いた可能性が高い。また没後発行の『富本憲吉全集 全三巻』(小学館発行、平成7年)をはじめ、富本の作品集との照合により、遺品写真のなかの作品写真を特定することが出来た。③ 富本の自筆画巻、画帖および『富本憲吉模様集三冊』との照合遺品写真の中には、富本が制作の上で重視した創作模様の資料と思われる写真が13点存在する。そこで、富本が模様を描いた画巻や画帖(注8)と、創作模様を収録した『富本憲吉模様集三冊』(注9)を遺品写真と照合し、その関連を考察した。詳細は「2 遺品写真の詳細」を参照。④ 野島康三、伊藤助右衛門ら交友関係者資料との照合― 71 ―
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