a本b本とも、手印・持物は基本的に同様である。ともに、右手21手とするのに対し、左手は22手と1手多い。〔表2・3〕では左の傍牌手に対応する右手を空欄とし、第のである。一 清水寺式千手観音画像における四十手図像清水寺式千手観音の絵画作例は、現在少なくとも十数件確認される。本稿では、実見したものを中心に、12世紀と目されるボストン美術館本以下、版本も含め12件の作品について、手印・持物の種類と配置を記録する。なお、各手(持物)の順序は、内外や前後などの立体的な位置は敢えて考慮せず、画面上での平面的な位置関係すなわち上から下へという配置順で記録していくこととする。⑴ボストン美術館本(平安12世紀)〔図1・2、表1〕本作例は脇手のほかに数多くの小手が像の背後に並列しており、その外縁は円形を呈す。手印・持物をあらわす手は左右各22手で、頂上化仏手、合掌手、宝鉢手をそれぞれ2手であらわす。頂上化仏手のほか、右第3手が化仏手である。通常左右各21手であるのに対し、本作例は1手ずつ多い。宝珠手が右第6手および左第13手と二つみられるが、前者は三弁宝珠、後者は横長の楕円形をあらわす。ちなみに本作例には玉環手があらわされていない。左右第11手の蓮華手はともに胸前で蓮茎を執り、荷葉が肩前にあらわされる。肩の上方に開敷蓮華が描かれており、位置関係からしてそれぞれ荷葉と繋がっているものとみなされるが、現状では荷葉と蓮華との連結状況については確認できない。頂上化仏を戴く2本の手(左右第1手)の付け根は、肩上方にあらわされた蓮華の後方に位置している。通常、頭上に挙げる頂上化仏手は他の脇手と同様に観音の肩から伸出するが、本作例においてはそれらと肩との間に並列する小手があらわされており、極めて珍しい表現となっている。⑵京都・蓮華王院本堂 千手観音像納入摺仏(1164年)a本〔図3、表2〕⑶京都・蓮華王院本堂 千手観音像納入摺仏(1164年)b本〔表3〕蓮華王院本堂の千手観音像に納入された摺仏は大きく分けて清水寺式とそうでないものとの2種あることが知られている。清水寺式は4種(4版)確認されているが(注3)、その内の2種は一部破損、あるいは摺りが不鮮明な部分が多いものであるため、本稿では各手の印相・持物がある程度判明できる作例2種について報告する。― 298 ―
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