鹿島美術研究 年報第31号別冊(2014)
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が化仏手である。⑻滋賀・延暦寺山内寺院本(鎌倉14世紀)〔表8〕左右各21手で、頂上化仏手、合掌手をそれぞれ2手であらわす。左右第6手に化仏手をそれぞれあらわすため、本作には化仏が都合3体描かれている。⑼滋賀・浄信寺本(鎌倉14世紀)〔表9〕左右各21手で、頂上化仏手、合掌手をそれぞれ2手であらわす。右第2手が化仏手である。宝鉢手があらわされない。⑽京都・福知山市観音寺本(1384年)〔表10〕左右各21手で、頂上化仏手、合掌手をそれぞれ2手であらわす。右第2手が化仏手である。⑾大阪・鶴満寺本(南北朝14世紀)〔表11〕左右各21手で、頂上化仏手、合掌手をそれぞれ2手であらわす。左第7手が化仏手である。本作例では、この化仏手に相対する右第7手の持物が宮殿ではなく、球形物を載せた容器となっており、宝篋の可能性がある。⑿京都・智積院本(16世紀)〔表12〕左右各21手で、頂上化仏手、合掌手、宝鉢手をそれぞれ2手であらわす。化仏手をあらわさない。以上、ここに挙げた12件の清水寺式千手観音像のうち、化仏が1体すなわち頭上の2手による頂上化仏のみの作例は、⑸天永寺護国院本、および⑿智積院本の2件に止まる。⑻延暦寺山内寺院本は化仏を3体あらわす珍しい例であるが、その他の計9件は、頂上化仏手と化仏手をそれぞれあらわす。上記に挙げた作例の他、福井県小浜市の万徳寺所蔵の清水寺式千手観音画像(鎌倉)も、頂上化仏手のほかに右脇手に化仏手をあらわす。このようにみてくると、化仏を頭上にのみあらわすものは、むしろ例外的な作例といえよう。2手による頂上化仏手と、1手のみで化仏を執る化仏手とをともにあらわすのが、清水寺式の通例のかたちと捉えることができる。― 300 ―

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