鹿島美術研究 年報第31号別冊(2014)
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― 446 ―を有した視覚芸術の教育・研究所を構想し、「100万冊を蔵する図書館と200万枚の画像を持つ写真資料室」(注4)、その他書簡や手稿も含めた専門的な美術研究機関であるゲッティ・リサーチ・インスティテュート(GRI)や、保存研究所を設立し、施設に併設されている。ゲッティ・センターは、美術資料の収集や研究に関わるさまざまなプログラムの実践に加え、同財団が所有する美術作品や資料のデジタル化、またそのデジタル資料の公開、閲覧についても推進しており、2013年よりデジタル資料をオンラインで無償提供する「Open Content Program」を開始している。さらに、同ウェブサイトでの検索システム「Getty Search Gateway」によって、美術館のコレクションや100万冊を超えるGRIの蔵書など、複数のデータベースを横断した検索が可能となっている。それらオンラインでの検索システムを利用したリサーチ・ライブラリーの蔵書、資料については、GRIでの研究者登録によって実際に閲覧でき、GRIのリサーチ・ライブラリーでは、身分証の提示により比較的利用が容易な雑誌や新聞の閲覧スペースである地上フロアと、研究者による調査を主とした書籍や写真資料の地下2フロアがある。そこでは開架の資料は自由に閲覧でき、閉架の資料は申請により利用可能となっている。ロサンゼルスでの日本の美術動向の受容本研究では、主にゲッティ・センターが保有する絵画、彫刻、建築、工芸、写真など美術に関わる書籍、カタログや雑誌、また特別なコレクションなどを含む検索システム「Primo search」をもとに、もの派の作家を中心とした資料の収集、配架状況、また検索システムでのカテゴリーの分析について調査した。なお、アメリカでのもの派の文献に関する調査を行うにあたり、100万冊を超える蔵書をもつGRIを本調査の対象としたことには、その収集されている資料の膨大さ以外に2つの理由があげられる。まず第一に、GRIは建物内に展示室が併設されており、2007年3月から6月にかけて「芸術、反芸術、非芸術─公共の場での実験、戦後日本の前衛芸術1950−1970 Art, Anti-Art, Non-Art: Experimentations in the Public Sphere in Postwar Japan, 1950−1970」と題した、日本の1950年代から70年代の美術の動向をテーマとした展覧会が開催されている。展覧会では、戦後から大阪で開催された1970年の日本万国博覧会までに活動した実験工房、具体、ハイレッド・センター、フルクサス、プロヴォークなど、「反芸術」、「非芸術」といった芸術の不可能性を問う数々の前衛芸術に焦点が当てられた。展覧会では直接もの派が1つのセクションを与えられることはなかったが、多摩美術

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