― 447 ―大学出身の作家によって結成された「美術家共闘会議(その後「美共闘REVOLUTION委員会」を結成)」の彦坂尚嘉による「フロアイベント」が作家の自宅という「内なる制度」として反芸術、非芸術の視点から紹介されるなど(注5)、もの派と同時代の活動が紹介されている。第二に、2012年にロサンゼルスで開催された「太陽のレクイエム」が李、関根、菅、吉田、小清水、成田、榎倉、高山、原口、高松の計10名、50点を超える作品が展示され、アメリカで初めて開催されたもの派の回顧展であり、また会期中には、「もの派作家たちの声─日本の現代美術、1970年前後 Voices of Mono-ha Artists: Contemporary Art in Japan, Circa 1970」というシンポジウムが南カリフォルニア大学で開かれたことがあげられる。GRIでの「芸術、反芸術、非芸術」に携わった廣李果によるならば、「太陽のレクイエム」は参加作家、作品点数の多さのみならず、「ギャラリストの手腕」による個人や美術館に収めることでの再制作の実現、キュレーターの吉竹美香の10年を超えるリサーチの蓄積などによって、アメリカのコレクターや美術館から高い評価を得たという(注6)。アメリカにおいても抽象表現主義以後の動向として、もの派と同時代にイリュージョンを排した還元主義的な形態や色彩を特徴にもつ「プライマリー・ストラクチャー」や「ミニマル・アート」、また自然物を用いて屋外での制作を主とする「ランド・アート」や「アース・ワーク」などが注目され、そのような異なる地域での共時性のもとに展開された芸術動向として、アメリカの美術関係者はもの派へ関心をよせていた。本調査においては、特に先にあげた「芸術、反芸術、非芸術」を通じたGRIの戦後日本の美術への継続的な調査、資料収集、また2012年にロサンゼルスのBlum & Poeで開催された、もの派の回顧展による近年の注目の高まりを背景とした文献資料の充実が、当初予想された。もの派に関する文献資料の収集状況GRIの検索システム「Primo search」では、「monoha」の「Search in: Books, Journals, Archives, Digital Collections」での検索によって抽出された書籍は、1988年にイタリアのローマ大学付属現代美術実験美術館で開催された『MONOHA: LA SCUOLA DELLE COSE』(展覧会カタログ)、2012年の『太陽のレクイエム』、2012年にBlum & Poeで開催された菅木志雄展カタログの3件(2014年5月6日時点)であった。検索システムでは、項目として「Monoha (Group of artists)」が設定されているが、この項目での登録数は「具体美術協会」(検索項目「Gutai Bijutsu Kyokai」)の19件をはるかに下回るものである。個人の作家名の同方法での検索結果は、李21件、関根2件、菅7件、
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