― 507 ―における類縁性の由縁である。そのため、絶対者や大自然といった圧倒的な存在という象徴性が両者の作品に見られるのである。一方、グリーンバーグが「アメリカ型絵画」で言及したロスコ様式の作品は、1949年頃に形成されたものだが、大きなカンヴァスを用いた色面の拡がりの中に、輪郭を暈した二、三の矩形が水平に浮遊する。当時のロスコ様式の作品は、一見、鮮やかな色を用いた画面に見えるが、実際には、抑制された色調による薄い色の層を繊細なタッチで何度も塗り重ね、地と図が相互に働き合うことで、微妙な色合いを醸し出す豊潤さを生み出している。その表現は、カンヴァスに絵具が塗付されるというよりは、カンヴァスが絵具を吸収し、カンヴァスそのものが色を放つかのようである。また、その筆触においては手業の跡は残され、ニューマンやスティルのように明確に色同士を分けるのではなく、背景となる地と矩形の図の境界は暈される。このように、一見すると曖昧なかたちでぼんやりした気体のような色の拡がりを感じさせるのだが、それだけでは、ニューマンとスティルに匹敵する、色彩によって観る者を引き込み、空間そのものまでに「フィールド」として波及していく作品としての力を示すことができない。繊細な色遣いと筆触によるロスコの作品的強度を支えたのは、その画面構成である。ロスコは、作品の多くで地となる部分の色彩に矩形で使う色よりも彩度の高い色や色相の異なる色を置くことで、縦のラインを強め、垂直性を維持する効果を生み出している。さらに、カンヴァス側面にまで丹念に色を施すことによって、色と支持体がまさしく一体化し、カンヴァスそのものの物体性が生み出され、実体としての存在感が表れる。加えて、ニューマンとスティルが垂直性のあるジップや色斑を並列に並べ、横長のカンヴァスを多用したことに対して、ロスコの作品の多くは、ポートレートを思わせる縦長のフォーマットを用いている。そのことによって、水平にならぶ矩形の層が拡散せず、垂直性を保持しながら集中性を逃すことなく観者へと訴えかけるスケール感を備えている。これらの手法は、ロスコの絵画が画面内では平坦な色面を水平に連ねて平面性を強調する表現を用いながらも、実は、物体として存在することを示す効果を生み出している。この側面にまで絵具を塗布する方法は、1950年代後半に主にミニマル・アートの批評で用いられる、地と図を統合させ一つのユニットとして表すことを試みた「ハード・エッジ」の表現を予兆するものである。ロスコ様式の初期より採り入れられていたこの手法は、ロスコ晩年の〈ダーク・ペインティング〉によって頂点を迎える。これらの作品では、カンヴァスの四方がくっきりと白く塗られた硬い縁が特質となって
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