鹿島美術研究 年報第31号別冊(2014)
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注⑴ 「カラー・フィールド」とは、抽象表現主義の画家たちのなかでも、色面抽象を特質としたニューマン、スティル、ロスコら三人を評する際に用いられた。その背景に、1960年代中頃、ヘレン・フランケンサーラー、モーリス・ルイス、ケネス・ノーランド、ジュール・オリツキーなど色面抽象の流れを汲む画家たちの作品を論じる際に「カラー・フィールド・ペインティング」という用語が用いられたことがある。「カラー・フィールド・ペインティング」の用語が定着すると、さかのぼって、抽象表現主義の画家たちの一部が「カラー・フィールド」の画家として分類された。用語の定義については、以下に詳しい。Robert Hobbs, “The Term ʻColour Fieldʼ: A Reframing,” The shape of colour: excursions in colour field art 1950−2005, exh. cat., Ontario, Art Gallery of Ontalio, 2005, pp. 18−23.⑵ Clement Greenberg, “Feeling Is All,” Partisan Review, January-February, 1952. reprinted in Clement Greenberg, The Collected Essays and Criticism Vol. 3, ed. John OʼBrian, Chicago and London, The University of Chicago Press, 1993, p. 103.⑶ グリーンバーグは「アメリカ型絵画」(1955)のなかで、ニューマン、スティル、ロスコの三人は、その色彩によって新しい種類の平面性を開拓したと高く評価した。発表当時は、「カラー・フィールド」という用語はエッセイの中でまだ用いられていないが、1958年の改定版には、「ニューマンの絵画は、ついにはフィールドと呼ばれなければならない」と記している。Clement Greenberg, “ ʻAmerican-Typeʼ Painting,” Partisan Review, 1955/1958, reprinted in Art and Culture: Critical Essays, Boston, Beacon Press Book, 1961/1965, p. 227.⑷ Clement Greenberg, “After Abstract Expressionism,” Art International, 1962, reprinted in Clement Greenberg, The Collected Essays and Criticism Vol. 4, ed. John OʼBrian, Chicago and London, The University of Chicago Press, 1993, p. 130.⑸ David Anfam, “Stillʼs Journey,” Dean Sobel and David Anfam, Clyfford Still: The Artist Museum, New ⑹ James E.B. Breslin, Mark Rothko: A Biography, Chicago and London, The University of Chicago Press, ⑼ ⑺ 筆者によるロスコの長男クリストファー・ロスコ氏へのインタビュー(2014年2月13日、ニュ⑻ ロスコが書いた未発表の芸術論集。その存在は知られながらも、長い間、原稿が実在するのか不明だった。その原稿は遺品の中から発見され、クリストファー・ロスコ氏の編集のもと出版された。本書の大半は、1940−41年頃に執筆されたと推測されている。Mark Rothko, The Artistʼs Reality Philosophies of Art, ed. Christopher Rothko, New Haven and London, Yale University Press, 2004, p. 43.Ibid., p. 47.(邦訳 中林和雄訳『マーク・ロスコ 芸術家のリアリティ』みすず書房、2009年、1993, p. 95.― 516 ―テラ、ノーランドへと受け継がれていくが、ロスコが追い求めた絵画の様式は、色彩と形態、構図、画面を囲む枠という絵画の本質を問うものであり、それらは、60年代のアメリカ絵画における、より純粋な視覚性と絵画の構造性の追究という美術的動向を加速させることになった。York, Skira Rizzori Publications, Inc., 2012, p. 90.ーヨーク)。

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