Ⅱ.「美術に関する国際交流援助」研究報告1.2013年度援助期 間:2013年5月10日~5月15日(6日間) 2013年5月10日~5月12日(3日間)招致研究者:オーストラリア、国立キャンベラ大学 教授 アンシア・カレン フィリピン、フィリピン大学ディリマン校 教授 パトリック・D. フローレス報 告 者:関西大学 文学部 教授 蜷 川 順 子本件で招致した2名の研究者は、2013年5月11日に、第66回美術史学会全国大会のプログラムの一環として関西大学百周年記念会館において開催した、国際シンポジウム「油彩への衝動」のパネリストとして活動した。その発言内容は、16世紀半ばからわが国で知られるようになった油彩をめぐって、従来は主に技法や素材研究の対象であったこの主題を、様式、図像、作者同定、制作の社会的背景、視覚文化などの諸問題を扱ってきた学問分野である美術史との関係において、グローバルな視野から捉えようとしたシンポジウムの主旨と、密接に関連するものであった。招致研究者のうちアンシア・カレン氏は、西洋の油彩画の歴史の中でもっとも注目すべき転換点である、19世紀印象派にいたる諸問題を論じた。また、パトリック・フローレス氏は、西洋に対して開かれ続けたフィリピンにおける、「コロニアル・ペインティング」としての西洋画受容と変容を論じた。ここでは、両氏の発言をそれぞれ要約し、その意義と美術史研究者や学会への影響の見通しを、まとめに代えて述べることで、研究活動状況の報告としたい。1.シンポジウムにおけるアンシア・カレン氏の発言内容 ─『19世紀フランスの「戸外」絵画制作と油彩技法』─カレン氏は、19世紀のフランスで油彩画制作における芸術的変化を促したのは、技― 593 ―⑴ 外国人研究者招致① 「油彩への衝動」
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