3.まとめに代えて技法面での革新が語られる割には技法史的な考察が少なかった印象主義の諸問題について、カレン氏が提示した、諸道具の販売カタログや描かれたイメージの分析を通して考察する研究方法は、さまざまな問題に応用可能な、きわめて意義深いものであった。また、紙の使用や下塗りに関連して論じられた内側からの光は、近年注目され始めた問題でもあり、あらためてそのことに注意が喚起されたので、今後の印象派関係の議論では避けて通ることのできない重要な問題提起になったと思われる。フローレス氏が、油彩技法と切り離すことのできない西洋画の受容とイメージの機能に関して、ヨーロッパ文化のグローバル化というモダニズムに対峙されるポストモダニズム的視点を、ある種の改宗という観点から論じたのは斬新であり、コロニアル美術研究にとって非常に重要な提言であった。司会の大阪大学岡田氏が述べるように、「油彩」を切り口にしつつ、初期近代における、ヨーロッパ美術のグローバルな移植のプロセスを検討する興味深い視点を提供してくれた。期 間:2013年11月15日~11月23日(9日間)会 場:フランス、国立美術史研究所(INHA)報 告 者:京都造形芸術大学 准教授 林 洋 子フランス国立科学研究センター(CNRS)、パリ・ソルボンヌ大学、文化情報省が共同運営する国立美術史研究所(INHA)のアンドレ・シャステル・センター、ならびにブザンソン美術考古博物館は2013年度に二度に分けて、美術領域での「絵はがき」について考える国際シンポジウムを開催した。2009年以来、準備してきたもので、フランスの学会、大学も予算削減など厳しい状況のなか、先送りとなってきたが、ようやく実現したものである。2013年5月には、ブザンソンの同博物館で開催された「絵はがき」の展覧会と連動して第一回のシンポジウムが催された。ピカソ、アール・ヌーヴォーや建築など他領域にわたる充実した発表が行われたと聞いているが、報告者はその第二回目、11月のパリでのセッションに参加し、藤田嗣治の利用例について― 597 ―⑵ 国際会議出席① 国際シンポジウム 「絵はがきと創造─芸術領域における利用法、機能、成果(19-21世紀)」
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