― 126 ―のを実現しようとする度を越した大志」を認め、そられが「超人間的な高揚にも似た夢」を実現するという「同じ建築的な欲望」から生まれたものであると主張している(注16)。加えて彼は「数学的なエネルギーから成るこの傑作[エッフェル塔]」は「理論に基づいた概念を超えて、美の下意識の領野から取り出された起源」を持つとしながら「この絶対的で決定的な調和が、〈無限〉の地点を、人間にとって触れられるものにする」と説明する(注17)。彼にとって、ゴシック建築の伝統と、近代建築の数学的に計算された形状は、ともに超人間的な崇高性を志向するという共通の精神性に根ざしたものとして捉えられているのである。4-3.装飾モチーフにおける象徴性《メゾン・キュビスト》の習作における装飾モチーフは、より簡素な幾何学的様式へと変容していき、完成したファサード〔図19〕には、2階部分の屋根の下中央部に施された三角形のレリーフと、一階部分の扉の上に施されたレリーフ以外に、際立った装飾は見あたらない。天野知香も指摘するように、2階部分のレリーフは太陽をモチーフにしたものである(注18)。本稿では新たに、1階部分のレリーフが元来身体像として構想されていたという事実に着目したい。ポンピドゥー・センターにはこのことを明らかにする2つの習作が収蔵されている〔図20、21〕。そこには四肢を大きく広げた人物のレリーフがアーチの上に配されており、その周りに後光のように放射状の線が描きこまれている。これは2階部分の装飾のモチーフとなっている太陽の光線を表現したものであると考えられる(注19)。天体の下に人間を配置する、この階級的だが密接な関係について、彫刻家は自身の手記の中で明確に説明している。例えば「人間の書物に続いて神の書物に─天体のうちで─到達する(注20)」という覚書は、人間の知が天体に属する神の知へと至る前に必要とされる一段階であるということを、端的に示している。また別の手記の中で彼は、「肉体的プラン─官能性(Plan physique = sensualité)」、「心理的プラン─感性(Plan mental = sensibilité)」、「天体的プラン─霊媒性(Plan astral = médiumnité)」、「神的プラン─X(Plan divin = X)」のなかでも、後者2つは「漠然とした、定義され得ない形態」としてしか芸術作品の中には表現されていないと主張する(注21)。それでもゴシック建築やエッフェル塔が宿しているような超人的な崇高性を求めることこそが、芸術家を芸術家たらしめる。彫刻家は次のように述べている。
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