tsuto
177/639

― 167 ―3.詞書と絵の紙幅について光琳本は通常の詞書と絵と交互に連続する形式の全4巻で現存しているが、宗達本は詞書3巻、絵3巻の詞書と絵が別々の巻立てで現存し、さらに錯簡があるため途中順番が違う。また写しているときや、隣の絵や詞書と繋げる際に、少しずれが生じることも考えられ、寸法には若干の差もでることも考慮に入れてみていく。まず、詞書については、宗達本の当初の寸法は不明ながら、現状で両本を比べたところ、光琳は余白をつめ、制作するにあたり紙を節約していることが分かった。特に第1巻の2箇所が顕著で、宗達本では冒頭の第1~12紙まで長文の詞書が連なるが、光琳本では後半は行をつめて書き、11紙におさめている。2箇所目は、宗達本では二紙に書かれる詞書(第16、17紙)を、二紙目の文末は余白が多いので光琳本はそこを削除して、一紙(第22紙)におさめている。光琳本の全4巻の総計は約36m30cmで、約50cm強宗達本より短くなっていた。次に、絵の寸法は、こちらも宗達本に錯簡があるため、当時の寸法を正確に把握することはできないが、現状では、光琳本は全4巻の総計が約40m45cmで、60cm強宗達本より長かった。一紙の横の長さをゆったりととっている傾向がみられた。例えば、宗達本では横の端で途切れている樹木を、光琳は紙を増して描き足して樹木全体を画中におさめ(第3巻第28紙)、画面端にかかる水面に映る月の横にも紙幅を増し余白を入れている(第2巻第39紙)。また、絵の縦の長さは、光琳本では33.4cm、宗達本は第1、3巻が32.7cm、第2巻が32.8cmで0.6~0.7cmの差がある。恐らく当時漉かれたときの紙の寸法の違いと考えられるが、この点からも使用する紙にあうように構図の若干の変更が推測される。4.重ね図からみる模写方法の考察両本の絵を重ねた結果、構図や輪郭線がかなり一致する絵がある。太い線、細い線、線の長さ、筆の腹も使いながら、肥痩線を巧みに操って表現する山肌の線の一本一本、木や枝、水草の一本一本も概ね一致する。どの線も見逃さず同じように描いている。描線、配色、細部の描きこみまでもが同じように描かれており、丁寧に写し取っている。人物の頭、手足、衣文線も概ね一致する〔図1、2、3、5、9〕。第3巻第25紙の〔図4〕の岸辺の太い線、細い線、それらの少し揺れているところや、土坡のなだらかな稜線、その上に描かれる草、松の複雑に曲がる枝、岩の輪郭線や岩肌の肥痩線までもが概ね一致し、左下に小さく描かれる番の鴛鴦も一致する。右側の複雑に曲がって伸びる紅葉の木やその奥に見える屋根も少しずれるが、個々に合せると概ね一

元のページ  ../index.html#177

このブックを見る