tsuto
213/639

― 203 ―人たちが所属する権威ある組合であった。また、あらゆる組合のなかで最も高貴で優秀な商人が集っていたと云われ、ルイ14世の時代までには多くの特権を確立し特別な地位を形成していた。彼らの勤めはいかなる生産的行為にも従事せず既製品を飾りつけることであったとされ(注10)、百科全書では「メルシエは、[中略]全てを扱うが何もしない商人」と皮肉交じりに称されている(注11)。多くのマルシャン・メルシエたちは、日本、中国の磁器以外にも様々な西洋陶磁、東洋製の漆器の家具や宝飾品、時計、ガラスなどを扱っていた(注12)。そのため壺や置物といった単体の磁器のみならず、様々な器を組み合わせて作るシャンデリアやポプリ、燭台、時計付きの置物など多様な品にマウントを装着してつくる個性的なオブジェが彼らの店に揃えられた。日本、中国、フランスやザクセンなど様々な産地の磁器とその他の素材を結合させる総合コーディネートにおいて、マルシャン・メルシエたちはその本領を発揮していった(注13)。3.フランス製マウント装飾を伴う伊万里焼つぎに、マウントの装飾効果を考察するうえでとくに重要と思われる柿右衛門様式磁器(生産地:有田、製作時期:17世紀後期)や金襴手様式磁器(生産地:有田、製作時期:18世紀前半)の作例を挙げていく。3-1)ミュンヘン・レジデンツ「鏡の間」を飾る「色絵象置物」〔図4〕ドイツのミュンヘンにおけるレジデンツ(王宮)の「鏡の間」に陳列された柿右衛門様式の色絵象置物(国立バイエルン城郭庭園管理局蔵)である。象は頭を左に反らし、高く持ち上げた鼻の先端をくるりと巻きこみ、半開きに開けた口から舌を出している。つぶらな瞳は黒々と長い線で表わす。しなやかな丸みを帯びたこの象の体躯全体は、濁手の釉で覆われ、皴が柔らかな起伏となっている。斜めに曲げた尾の先端は筆のように丸い。背中の鞍布には、青の上絵で唐草文様を描き、布裏、紐、舌や口を赤で表わす。長い牙には黄色の上絵具が施されている。象は様々な草葉やトカゲを浮き彫りであらわしたオルモル台に載せられ、背後にそびえる小鳥を載せた時計を2匹の猿が左右からとり囲む。時計の作者はパリのエティエンヌ・ルノワール(Etienne Lenoir, 1717-1778)、オルモルもパリ製で1725年頃の作である(注14)。この宮殿の家財は1769年に作成された目録には次のように記されている。「1点の白い磁器の象。金鍍金をほどこしたブロンズ製の台に載せられている。象の背中にあ

元のページ  ../index.html#213

このブックを見る