tsuto
215/639

― 205 ―め金から蓋の側面、さらにイルカの付根が鎖で繋がれている。蓋付鉢は鳳凰や菊をはじめ様々な花を描いたものである。その蓋と鉢の口縁および高台はマウントで覆われ、蓋中央のマウントには貝殻や海草、珊瑚や枝を象った彫刻が込められている。3-3) ポンパドール夫人よりマリア・テレジアへ贈られた「色絵鯉滝登り獅子牡丹文角瓶」〔図7〕ルイ15世の愛妾ポンパドール夫人(Jeanne-Antoinette Poisson, marquise de Pompadour,1721-1764)がオーストリアの君主神聖ローマ皇帝妃マリア・テレジア(Maria Theresia, 1717-1780)へ贈ったブロンズ製オルモルを伴う色絵唐獅子牡丹鯉滝登文角瓶(オーストリア連邦文化財管理局蔵)である。この角瓶は、ロココ時代の代表的なマルシャン・メルシエ、ラザー・ドゥヴォー(Lazare Duvaux, 1703-1758)による注文品と推測されている。同様のタイプの角瓶は、8点がウィーン王室ホーフブルク宮殿に所蔵されるほか、セント・ジェームス宮殿St. James Palace(英国王室)にも所蔵されている(注18)。角瓶は、赤、緑、藍、桃色で表裏二面に唐獅子牡丹を、側面の二面に鯉の滝登り文様を描き余白を黒い釉薬で塗り込めた金襴手様式磁器である。このバロック色きわだつ意匠の重厚感は、1730年以降ロココの流行が浸透したフランスではもはや流行遅れの感を拭いきれない。オルモルが加えられたのはそのためであろう。左の角瓶に葉綱や羊面、獅子の脚を中心とするルイ15世様式の彫刻があしらわれる一方で、右の器はロカイユの流線形をつらねた枠組みを双耳の把手の曲線で際立たせる典型的なロココ意匠である。オルモルは1740年~1750年の作と考えられることから、磁器の製作とほぼ同時代にもかかわらず、オルモルで最新流行の様式へ改造されたのである。3-4)ルイ16世による「博物館」旧蔵の「色絵梅花唐人物文蓋付鉢」〔図8〕ポプリpot pourriと呼ばれる香料容れに改造された柿右衛門様式の蓋付鉢(ルーヴル美術館蔵)である(注19)。鉢と蓋の図様は、上絵による青い小葉を連ねた花唐草の縁取りにより各三面に分割され、それぞれの空間に青の太湖石と赤の大輪の花を咲かせ枝を左右に広げた梅樹、その左に団扇を手にした緑の衣の唐人物、右に傘をさす紫の衣の唐人物を描く。絵付けの構図は左右均衡に近い西洋的な秩序に則している。蓋の頂にはアカンサスの葉と蕾を象ったオルモルの摘みを配し、蓋と鉢の間をオルモルの帯が取り囲む。この帯も

元のページ  ../index.html#215

このブックを見る