― 241 ―②の画面では、左端に桜の木を描き、その木の下には①の画面から続く牡丹が描かれている。桜の木の幹には、啄木鳥も描かれている。画面中央には木蓮が描かれ、その木には鸚鵡がとまっている。木蓮の木の下には紫陽花が描かれ、紫陽花の上の小高い丘にはつがいの雉が配されている。雉の側には、藤の花が見え、さらに画面右端の下には、鶏頭の花と立葵が描かれている。③の画面では、②の画面から続く鶏頭の花が描かれ、その上部には向日葵がある。向日葵の横から、楓の木が伸びており、楓の木の下には雌雄3羽の鶏がいる。その横には葵と芙蓉が咲いている。そして、水辺に向かって飛翔する雌雄の白鷺が見える。画面右下部は、水辺となっており、そこには睡蓮が浮かべられ、ここにもつがいの鷺がおり、さらに笹が配されている。④の画面では、③の画面から続く楓の木の枝と水辺の笹が描かれ、その横には鴛鴦、その側には水仙が見える。その先には、南天や薄、多種多様な菊が描かれ、その上を雀が飛んでいる。そして、菊の右下には朝顔が描かれ、その横にはまた画面①へと続く菖蒲が描かれている。それぞれの画面に描かれた鳥は、中国において吉祥図とされてきた《百鳥図》〔図10〕と多くが共通する。《百鳥図》には、聖人が出て太平の世になると現れる瑞鳥であり、百鳥の王とされる鳳凰が描かれ、その横には鳳凰が棲むという梧桐がある。朝陽を拝する鳳凰と、孔雀、鶴、鵪鶉、鴛鴦、鶺鴒、鷺、鴨、鸚鵡、鳩、燕、叭々鳥、喜鵲、綬帯鳥、翡翠などの群鳥が水辺の梅竹を背景に描かれている。この作品は、百鳥が鳳凰に謁見する図、百鳥朝王図であると同時に、丹鳳朝陽という高位にして吉運があることを寓意する吉祥図でもある。《百花百鳥図》にも、孔雀、鴛鴦、鷺、鸚鵡、鳩、鶏などが描かれている。これらの鳥には、様々な寓意があるといわれている(注13)。例えば、孔雀は九徳をそなえる文禽で、鴛鴦は夫婦の仲のよさを寓意し、鷺も蓮池に描かれることで幸せな結婚、家庭の繁栄の願いが込められている。鶏も、朝を告げることがら、古来太陽と深くかかわりのある陽鳥とみなされていた。さらに、描かれている鳥のほとんどがつがいで描かれており、《百花百鳥図》全体の吉祥的な意味合いを強めている。また描かれた植物にも、吉祥性を見出すことができる。例えば、鶏頭の花の名の由来は、花の形が鶏の鶏冠に似ていることであり、太陽と結びついた特別な花と扱われてきた。また、葵や立葵、向日葵も向日性であることから、太陽とのかかわりによって、吉祥とされた。わかる限り挙げてみても、鳥や植物など描かれたモチーフの多くが、吉祥的意味を含んでおり、この件に関しては更なる調査を要する。敢えてその特徴を述べるとすると、太陽と関わりのある花鳥が選ばれている点が
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