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― 427 ―1.使用本について『後素集』と『列仙全伝』・『仙仏奇踪』の内容の比較検討を行うにあたって、まずそれぞれの使用本を決定する必要がある。『後素集』については、かつて国内に所蔵されている13本の写本を比較し、校訂を行った(注2)ので、その結果を利用する。また『仙仏奇踪』については、国内に所蔵される12本を調査し、その系統を整理した(注3)結果、本研究では、1丁の落丁があるものの、初版本の完本であり、良質の複写を入手できる京都大学附属図書館本を使用することとした。『列仙全伝』は和刻本が流布しているが、『後素集』成立当時は未だ和刻本は刊行されていなかったため、全国漢籍データベース(注4)において、明刊本とされる7本(国立公文書館内閣文庫本・市立米沢図書館本・静嘉堂文庫本・東北大学附属図書館本・蓬左文庫本・前田育徳会尊経閣文庫本・山梨県立図書館本)を調査し、使用するに最もふさわしい本を選定することとした。上記7本の調査(注5)の結果、静嘉堂文庫本以外の6本はいずれも同版で明刊本と見られるのに対して、静嘉堂文庫本は和刻本であることが判明した。明刊本6本のうち、東北大学附属図書館本・山梨県立図書館本は零本であり、また市立米沢図書館本と前田育徳会尊経閣文庫本は完本であるものの、一部に落丁が見られることから、候補から外れ、残る国立公文書館内閣文庫本と蓬左文庫本のうち、本研究においては、デジタルカラーデータでの入手が可能である国立公文書館内閣文庫本を使用することとした。2.『列仙全伝』と『仙仏奇踪』『後素集』と『列仙全伝』・『仙仏奇踪』との関係を検討する前に、『列仙全伝』と『仙仏奇踪』との関係を見ておきたい。明末の万暦28年(1600)に刊行された『列仙全伝』は、9巻からなり、520名を超える仙人の伝記と図を収載する書物であり、仙人伝の歴史の中では、収載する仙人数の多さもさることながら、図を併載する点が重要視されている。これに対して、2年後の万暦30年(1602)に刊行された『仙仏奇踪』は、仙人63人の伝記と図から成る「消揺墟」3巻、仏祖61人の伝記と図を載せる「寂光境」3巻、道教経典や道士の語録等からの抜粋を収めた「長生詮」1巻、仏祖の法語を抜書きした「無生訣」1巻の計8巻からなる書物である。本研究で扱う仙人の伝記と図について両書を比較するならば、9巻からなる『列仙全伝』は、520名余りの仙人の伝記を収載するが、その全てに図が掲載されているわけではなく、補遺である巻9が図を全く付していないこともあり、図は伝記の半分以下の193図である。一方、『仙仏奇踪』に伝記が載る仙人の数は63名であり、『列仙全伝』と比べると収載されて

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