― 486 ―中国3期:唐草葉形が紡錘形・短冊形のものこの時期には、唐草葉形がそれ以前より単純化する傾向があり、紡錘形または短冊形を持つものが出現する。菊花芯は大形化したものに加え、二重化あるいは三重化するものも見られる。長方形盆(軸盆)は横向きに文様が描かれるものが出現するが、用途の変化を示しているのかもしれない。また注目されるのは韓国で詳絲(サンサ)と呼ばれる直線棒状貝片による曲線表現技法が1点ながら中国製と見られる螺鈿漆器に確認されたことである。本期の時期・年代については確定的では無いが、明代後期に当たる16世紀後半から17世紀前半頃を想定しておきたい。3)「朝鮮半島」製螺鈿漆器の検討本報告では、23点の「朝鮮半島」製螺鈿漆器について検討を行った(表2)。検討の結果、これら作品群を大きく3期に区分したが、これらの基準は以下の通りである。「朝鮮半島」製螺鈿漆器の時期区分と想定年代朝鮮半島1期:唐草の葉形が釣針形のもの唐草文が高麗時代螺鈿器、あるいはそれに近似するものを一括した。唐草の葉形は釣針形で、茎蔓は金属線を使用する。年代についてはこれまでの諸氏による見解を受け、14世紀までの範囲で考えたい。朝鮮半島2期:唐草の葉形が矢印形・三角形、またはノ字形のもの朝鮮半島製と見られる螺鈿器の唐草葉形にはいくつかのバリエーションが存在する。本期の作例には、唐草葉形が矢印形・三角形のもの、またノ字形のものを含めた。前者はおおむね金属線を、後者は貝片を茎蔓として使用する。ノ字形の葉形は中国3期に対応するように思われ、そうすると両者には年代的な齟齬を生じているかもしれない。朝鮮製螺鈿器の唐草葉形成立経緯の捉え方が問題となろう。矢印形・三角形葉形が中国2期と思われる個人蔵中国製楼閣人物螺鈿長方形箱唐草葉形(注10)の系譜を引くと考えられることから、本期は朝鮮時代前期(15世紀代)と現段階では考えておきたい。朝鮮半島3期:唐草葉形がチョロギ形(ヒイラギ様)を含むもの高橋隆博氏がチョロギ形と呼ぶ、より大形の唐草葉が表されているものを本期に含めた。この葉形は朝鮮時代前中期の螺鈿漆器に特徴的な唐草文と評し得るものであるが、半島で独自に成立したと見るよりは、東京国立博物館蔵楼閣人物螺鈿輪花盆(TH-361)の唐草といった中国の唐草文と系譜的な関係を持つと考えたい。また半島におけるチョロギ形葉形の出現時期もはっきりしない。No. 13のMFA蔵牡丹蝶四方盆(11.10594)の唐草はコンマ形の葉と共伴しており、例えば茎蔓と曲線貝片で描くNo.
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