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― 536 ―府の方針にもかかわらず、当時の米国議会や公衆が欧州復興計画を受け入れる準備の出来ていない時期で、アメリカ国民の生活に政治の影響が及ぶのではないかという当惑や恐怖があったため、芸術と政治を区別すること自体が絶妙なタイミングで政治的立場として機能したからである。3-2、表紙デザインまず雑誌として一際目を引くのはその表紙である。縦横の長さが約25cm×18cmの比較的大きい判型に、荒々しい筆致の絵がカラー印刷されたものが表紙になっている。それは三角形を組み合わせたパターンからなる全体的に抽象的なイメージであるが、上部に一際大きく目がひとつだけ描かれている〔図5〕。創刊号では、表紙にはタイトル文字も号数の表記もない。そして2号からは同様の絵の表紙に号数が付き〔図6〕、3号からは「The Tigerʼs Eye」という金色のタイトル表記が下方に入るとともに、絵の色調が変わる〔図7〕。また、5~8号、そして9号と表紙の絵を類似したデザインに2回変えている〔図8〕。ジャンルや著者などの雑誌の中身がその外見からは推測できないような装丁となっており、そのヴィジュアルデザインは当時の他のリトルマガジンと比べても一際アヴァンギャルドな様相を呈していたと言えるだろう。表紙の絵を描いたのは、美術担当の編集者ジョン・スティーヴンである。彼は当時ポロック、ニューマン、ロスコ、アド・ラインハート、クリフォード・スティルといった後に抽象表現主義と呼ばれる美術家たちと同じベティ・パーソンズ・ギャラリーに所属していた〔図9〕。雑誌のタイトルである「タイガーズアイ」とは、通常では茶色、金色、褐色で織り成される縞模様の宝石である虎目石を意味するが、ルース・スティーヴンは、ウィリアム・ブレイクの詩「虎(The Tiger)」(1794年)から着想を得てこのタイトルを命名した(注21)。ブレイクの詩は、夜の森のなかで生命力に満ちた火のように輝く虎を歌ったものである。ジョン・スティーヴンによる表紙の絵は、その荒々しい筆致で描かれた暗色の抽象的なパターンと一際目立つ黄色い目から、生命力に満ちた闇夜の虎というブレイクの詩のイメージを抽象化しつつも体現したものと言えるだろう。3-3、編集方針『虎の目』は、その外見からは内容が予想できないような装丁ではあるが、頁をめくると我々はさらに困惑することになるだろう。まず、一見して目次が見当たらないからである。各巻100~150頁ほどの雑誌だが、目次は毎号雑誌の中間あたりに位置す

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