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― 537 ―る。目次には色紙が使われることで、他の頁とは区別されるよう一応の工夫はみられる〔図10〕。また、我々が困惑するもうひとつの理由であるが、『虎の目』の編集の大きな特徴として、掲載されている詩や小説、作品図版のほとんどに作家名が記載されていないことである。その代わり、目次にそれぞれの頁のタイトルに加えて、作家名および作家略歴が記載されている。毎号目次の前頁に編集者ステートメントまたは特集概要が掲載されているが、2号の編集者ステートメントにその理由が掲載されている(注22)。「リルケの詩は、いまや読者の想像力のなかで読者の詩となる」とあるように、個別の頁の作品の作家名をあえて伏せることで、作者ではなく、作品そのものをまず味わうように読者を促している。この編集方針から読者に対する教育的配慮が感じられる。また、このような紙面構成の特徴のため、巨匠も若手も、アメリカの作家も国外作家も、それこそ古今東西の作家たちが比較的等価に扱われたため、作家の固有名に頼ることなく、雑誌のテーマが前景化した。例えば、2号の特集は「海」で、シェイクスピアの「アリエルの歌」、ポール・ヴァレリーの「人と貝殻」、ルース・スティーヴンの詩、ハーバート・カフーンの詩などに加えて、「浦島太郎」と「海月」の二つの日本の御伽草子も掲載された〔図11〕。また、視覚芸術においては、編集者のジョン・スティーヴン、シュルレアリストであるマグリット、エルンスト、ケイ・セージ、抽象表現主義者のテオドロス・スタモス、ウィリアム・バジオテス、ミルトン・エイブリー、モーリス・グレイブス、ゴットリーブ、そして葛飾北斎やロシアの画家レオニード・トカチェンコ、写真家のアレクサンダー・ハミッドによる「海」をテーマにした作品図版がそれぞれ掲載された〔図12〕。特集のテーマは、3号が「ドーリア式柱のつた」で、アポロン対ディオニソスと古代ギリシアの神々を対置したニーチェの「悲劇の誕生」の引用がテオドロス・スタモスのドローイングとともに掲載され、また人体が柱のように垂直に林立するピカソの《三人の踊り子》(1925年)がカラー図版で掲載された〔図13〕。4号は「彫刻」、5号は「アンデス」で、スティーヴン夫妻が1946年に1ヶ月間ペルーで過ごしたことが5号の特集に反映され、アイマラ伝説などとともに、ナスカの織物やインカ帝国遺跡の写真が掲載された〔図14〕。6号は「崇高」特集で、ニューマンの高名な文章「崇高はいま」が、「美術における崇高とはなにか?」という企画で、クルト・セリグマン、ロバート・マザウェル、デイヴィッド・シルヴェスター、ニコラ・カラス、ジョン・スティーヴンの文章とともに掲載された。7号が「画家、彫刻家についての詩人」、

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