― 547 ―(3)第三曲歯曲歯は香花を捧げるとされ、①柄香炉を持す作例(藤田美術館本・奈良国立博物館本〔図7〕・香雪美術館本・常忍寺本・大和文華館本・能満院本)と②香炉を持す作例(神宮寺本〔図8〕・ギメ美術館本)の二つがある。(4)第四華歯右手に花を把り、左手に花盤を把るとされる華歯は、①両手で花盤を捧げる作例(神宮寺本〔図9〕・ギメ美術館本)と、②右手で未敷蓮華を把り、左手掌上に花盤を載せる作例(藤田美術館本・奈良国立博物館本〔図10〕・香雪美術館本・常忍寺本・大和文華館本・能満院本)の二つがある。華歯は「如尼女」という性格を表すために髪を尼削ぎとする点に特徴があり、これは唐装本だけでなく和装本にも共通する要素である。ただし、平安時代の根津美術館本の華歯は尼削ぎとしているが、同じく平安時代の盧山寺本では他の羅刹女と特に髪型を区別しておらず、初期の頃はまだ一定していなかった要素であったことがうかがえる。(5)第五黒歯右手に刃・左手に軍持を持す尊格として儀軌に説かれる黒歯の表し方については、作例による持物の異同は特に認められないが、刃の持ち方に時代の推移による展開が認められる。奈良国立博物館本・藤田美術館本〔図11〕・大和文華館本のように、刃先を上にして表す形式が共通して認められるかたちだが、神宮寺本・能満院本〔図12〕・香雪美術館本・成菩提院は刃を肩にかついだ勇ましい姿で表す。こうした表現は、後にもみるように、鎌倉時代以降、第十奪一切衆生精気を男形で表す作例が出てくることと同じ志向性を有するものとみなせるかもしれない。(6)第六多髪右手に銅環を取り、左手は舞うが如しとされる多髪は、①右手に銅環を取り、左手を袖衣内に入れ胸前で掲げる作例(奈良国立博物館本・藤田美術館本〔図14〕・常忍寺本・神宮寺本)と、②左手に銅跋を持して垂下し、右手を袖衣の内に入れて顔前で掲げる作例(香雪美術館本・大和文華館本〔図15〕)の二つがある。奈良国立博物館本・藤田美術館本・香雪美術館本は、眉を八の字につくり微笑を湛えた顔で表されるが、作例を越えて多髪に認められる特徴として興味深い。(7)第七無厭足『法華十羅刹法』に「恒守護」、『阿娑縛抄』に「恒守護経籍」と説かれる無厭足は、①両手で経箱(いずれも布の上に経箱を置いている)を捧げる作例(奈良国立博物館本〔図16〕・藤田美術館本・常忍寺本・大和文華館本)が多いが、②合掌する作例(神
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