― 550 ―成菩提院本のように頭頂で髻をつくり、残りの髪を肩下まで垂下させるもの、平安時代の盧山寺本や鎌倉時代の藤田美術館本のように髪を垂下させず結い上げる、二つの形式に大別される。冠の形状は様々ではあるが、大きくは三つに大別できる。①側面に三角形状の飾りが付いた冠〔図27〕、②「双環望仙髻」(注13)〔図28〕と称され、頭頂に二つの環状をつくる髪型と対になったもの(成菩提院本のように二つの環状が頭髪ではなく冠と一体化しているように見受けられるものもある)、③頭巾が付属した冠〔図29〕である。尊格ごとに特定の髪型や冠の継承関係が認められるかどうかという問題については、第一藍婆の巻髪、第四華歯の尼削ぎ等、髪型において唐装と和装の別を越えた共通点を確認できる。これは着衣の箇所でみたように、尊格の性格に応じた形式であるといえる。また、奈良国立博物館本と藤田美術館本において、第三曲歯は「双環望仙髻」の髪型が、第五黒歯は頭巾付属型の冠が一致するほか、持物も共通し、図像としての共通性を認めることができるが、他の羅刹女においては必ずしも髪型と持物が対で共通するわけではなく、あくまでも画面中の一部の共通項にとどまるものである。このことは、持物の箇所で確認したように、唐装本における図像の継承過程等を考察する際に留意したい点である。4.おわりに以上、唐装十羅刹女像について、持物・着衣・髪型及び冠の三つの観点から作例による異同等を確認し明らかになったこと、また、その成果を受けて今後の課題とするところを示し、本稿の結びとしたい。唐装十羅刹女像については、鎌倉時代以降の作例において尊格に応じていくつかの型に分類し得る図像の継承関係が認められることから、平安時代には一定していなかった図像が鎌倉時代以降に整理されていった過程をうかがうことができる。また、着衣や髪型・冠の形状については、吉祥天女や訶梨帝母など、他の仏教上の女性尊格と共通することから、唐装十羅刹女像は、唐装で表される女神像として一般性をもつものであり、十羅刹女を十羅刹女として特殊化している主な要素は持物に依るものであることがわかった。これまでの研究においては、唐装本と和装本を別のものとして論じる向きがあったが、今回の調査で確認し得たように、両者が全く別箇に展開してきたとは考えにくく、
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