― 591 ―Ⅱ.「美術に関する国際交流援助」研究報告1.2014年度援助⑴ 外国人研究者招致① 「紙からカンヴァスへ―グエルチーノの創作プロセスを追う」 「署名の殺人者―カラヴァッジョと血の詩学」期 間:2015年5月25日~2015年6月8日(15日間)招致研究者:デラウェア大学 教授 デイヴィッド・M・ストーン(David M. Stone)報 告 者:国立西洋美術館 主任研究員 渡 辺 晋 輔今回、イタリア・バロック美術の専門家であるデイヴィッド・M・ストーン教授を招聘した最大の目的は、ふたつの講演を開催することにあった。ひとつは国立西洋美術館において5月30日に開催された、グエルチーノに関する講演「紙からカンヴァスへ―グエルチーノの創作プロセスを追う」。もうひとつは神戸大学において6月2日に開催された、カラヴァッジョに関する講演「署名の殺人者―カラヴァッジョと血の詩学」である。このほかにも国立西洋美術館で開催中であったグエルチーノ展および同館所蔵品について議論がなされたほか、東京と神戸で、イタリア美術史研究者や学生たちとの交流の場が持たれた。5月30日の国立西洋美術館における講演は、14時から15時半までの90分の予定で行われた。会場には96名の聴衆が集まった。講演は同時通訳を通じて行われ、同時通訳の費用は西洋美術振興財団が負担した。講演は、グエルチーノの創作プロセスにおいて素描がどのような機能を果たしたのかというテーマについて、豊富なスライドを用いながら行われた。はじめに、グエルチーノ研究の創始者ともいえるデニス・マーンによる研究の概要の紹介と、それに対する疑問が提示された。マーンはグエルチーノの初期作品と後期作品で様式が大きく変化することに着目し、その理由をグエルチーノのローマ滞在に求めた。ローマでは理論家ジョヴァンニ・バッティスタ・アグッキや画家ドメニキーノによって古典主義美学が流行していたため、グエルチーノはローマにおける地歩を固めるために、画風
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